“新リストラ時代”の肩たたきツール? 「適性検査」に潜む魔物:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
金融や製造などの大手企業で、大規模な早期退職や転籍などが広がっている。新手のリストラ策として使われるツールの一つが「適性検査」だ。適性を見極めて転職するのは良いことのように見えるが、「適性がある=いい仕事ができる」わけではない。なぜかというと……
「適性検査を利用したリストラ」が起こした“大混乱”
「以前は50歳だったセカンドキャリア講習会が、昨年から45歳以上になりました。70歳まで雇用延長を義務化されそうなので、様子見する人が増えているのが大きな要因です。
だいたい新聞では中高年の転職市場がにぎわっているなんて記事がよく出てますけど、あんなの技術職だけですからね。自分も転職サイトに登録しましたけど、年齢を伝えた途端に引いていきます。大企業の管理職は最も人気がないんです。
それで昨年から、講習会で適性検査もセットで実施するようになった。会社はとにかくやめてほしいんだと思います。その一方で、最近は『追い出し部屋』の批判も多いし、下手なことしてSNSに投稿でもされたら元も子もない。それで『適性検査』を利用したリストラ策を打ち出したんです。
おそらく『あなたの能力は○○で最大限に引き出されます』なんて結果が出て、講習会で『セカンドキャリア』の講義を受ければ、早期退職を検討する気持ちにもなると考えたんでしょう。
で、何が起こったと思います? 辞めてもらっては困る人たちが早期退職するようになってしまったんです。
おかげで現場は大混乱です。ただでさえ管理職は若手の身代わり残業でへばってる。そのうち会社が肩たたきしなくても、みんな倒れていくんじゃないかって不安になります。適性検査が自分たちの首を絞めることになっているのに気付かない経営者って、無能以外の何物でもないですよね」
……なんとも。二言目には人手不足、人手不足というのに、このような手口は残念としか言いようがありません。会社という組織は個人の業績など気にする気は毛ほどもなく、現場に必要な人材だろうとなんだろうと関係ないのです。どんなに「長期的には自分たちの首を絞めているんですよ」と警告しても完全にスルー。どんなに会社を弱体化させ滅びることになると忠告しても、根っからのサラリーマン社長は「自分の在任期間」さえ会社が持てば、それでいいのです。
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