なぜ今、「ガチガチの管理」が機能しなくなったのか――「管理をやめた成長企業」の社長に直撃:悩めるマネジャー必見(5/6 ページ)
変化の時代にガチガチの管理をしても成果は上がらない――。そう話すのが、書籍「管理ゼロで成果はあがる」の著者、倉貫義人氏だ。その理由は?
老後に「無価値な人間」にならないために
長谷川: メルカリって、役職は役割にすぎないという意識が強いんです。一般的な企業だと、チームで一番優秀な人が課長になるんでしょうけど、われわれの場合はたまたまほかの人よりマネジメントが得意な人がなるのであって、別に一番優秀だとか偉いというわけではないと。実際、マネジャーになってもそれを理由に給料が上がるわけでもないんです。
僕はそれはいいことだと思っていて。サラリーマンで役職がつくと、取引先にもチヤホヤされたりしてつい、勘違いしがちだけど、定年退職したらみんなサーッと引いて行く……みたいなのは寂しいですよね。僕も今、いろいろな人と話ができるのは会社の看板があって、その下で自分の役割があるからであって、銭湯行って素っ裸になったら、おっさんだろうが若者だろうがみんな一緒、というのはすごく意識しています。
倉貫: 僕らも、社長というのは役割でしかないと思ってます。外で講演とかしたときはそれなりにチヤホヤされるけど、会社に帰るとみんな冷たいので(笑)、その温度差に風邪ひきそうなくらい。40人の社員がいても、秘書もいなければ総務部もないので、取材を受ける時も全部一人で対応しています。さすがに大変なときもあるんですけどね。
僕、「何年か後に会社を引退したら……」という仮説を立てて、去年(2018年)あたりから意識して副業してるんですよ。会社からの収入も社長の肩書もなくなった時に「自分はどうなるだろう」と考えると不安になって、今から準備をしておこうと思ったんです。
副業の1つは本を書くことで、もう1つ何かできないかと考えてみると経営しかなかったので、「北欧、暮らしの道具店」をやっているクラシコムさんで社外取締役をさせてもらっています。
長谷川: いいですね。
倉貫: 資本主義の考え方では、「ビジネスは価値交換だから、お給料の分だけ仕事しましょう、お客さまからいただく対価の分だけ仕事しましょう」ということになると思うんですけど、そのような考え方は疑った方がいいと思っているんです。
「1もらって1返す」という、ただの交換ではなく、1もらったら1.1返すことで、後で助けてもらえるような人のつながりができるし、みんながそうすることで、世の中よくなっていくんじゃないかと思うんです。だから副業も、今から1.1の徳を積んでいくつもりでやってます。今のうちからコツコツやっていけば、「社長を引退したら何もない」という状況は避けられるんじゃないかな、と。
長谷川: 僕は、最後は旅をしながら仕事をしたいんですよね。世界旅行が趣味なんだけど、旅行中でも仕事をするのは苦にならないし、好きな場所で楽しみながらやった方がアウトプットもいいものになるんちゃうかな、と。いわゆるワーケーションみたいな感じで仕事と趣味を一緒くたにしちゃいたいですね。
倉貫: いいですね! うちの社員にも世界中を旅しながら仕事をしてる人がいますよ。
長谷川: すばらしい。
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