中小企業が「優秀なスタッフを採用する秘訣」とは 「管理ゼロ経営」で注目の社長に聞いてみた:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」(1/5 ページ)
「報酬は“つらさの代償”なのか」「性悪説はなぜコスパが悪いのか」「なぜ“どうせうちの会社は”という感情が生まれるのか」――。管理ゼロで会社をまわす、ソニックガーデン社長の倉貫義人氏を直撃!
元ハンズラボCEOで、現在メルカリのCIO(最高情報責任者)を務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。今回のゲストは、2019年1月に刊行された著書『「管理ゼロで成果はあがる〜『見直す・なくす・やめる』で組織を変えよう」』が好評のソニックガーデン代表取締役社長、倉貫義人さんです。
同書籍では、管理職のいないフラットな組織を実現したユニークな経営手法や哲学が詳述され、話題になっています。「遊ぶように働きたい」という倉貫さんが、「自分もメンバーも楽しいと思える働き方」をどう実現しようとしているのか――。同じくITエンジニアたちを率いる長谷川さんがその秘訣(ひけつ)を探ります。
「報酬は“つらさの代償”じゃない、楽しくても稼げる」と気付くまで
長谷川: 今日は「働き方」をテーマにお話しましょう。倉貫さんが思う「良い働き方」ってどんなものですか?
倉貫: 僕らの会社では、「遊ぶように働く」を、キャッチフレーズにしています。自分たちは真剣だけど、周りから見たら遊んでるんだか仕事してるんだか分からないような状態がいいんじゃないかな、と。
長谷川: 「嫌だ嫌だ」と思いながら仕事をして、それに耐える代償としてお金がもらえる――という発想ではないんですね。
倉貫: そうです。仕事ってそもそも、「相手の役に立つからお金がもらえる」わけですよね。「つらいからお金がもらえる」みたいに考えるのは、ちょっともったいないと思うんです。若い頃、「楽しく働きたいです」と言ったら「仕事なんて楽しいわけないじゃないか」と怒られたことがありましたけどね。
長谷川: そういう考え方をするようになったのは、いつから?
倉貫: 最初は大学生のとき。僕、初めてのアルバイトが、すし屋だったんですよ。コンピュータが好きで理系の大学に行ったのに、何をまちがったのかすし屋に行ってしまい、アルバイトなのに修行させられて「あ、つらいな」と(笑)。最初は、「つらいけど仕事だから我慢してお金をもらおう」と思ったんだけど、全然向いていなかったからすぐ辞めました。次は家庭講師をやってみたんですけど、当時はコミュニケーション能力もなかったから、それも向いてなくて、すぐ辞めてしまいました。当時は、「仕事とは苦しくてつらいもので、時給はその代償」だと思ってました。
長谷川: 昔は、そういう考え方でしたよね。
倉貫: どんなバイトをやっても続かないから、「社会人になれないんじゃないか」と思ってたんですけど、あるとき先輩が「いい仕事がある」って言うんですよね。怖いですよね(笑)。
長谷川: 血液抜かれるんちゃうか? 薬飲まされるんちゃうか? みたいなね(笑)。
倉貫: それが、プログラムを作る仕事だったんです。普段から好きでやっている遊びみたいなことがアルバイトになるなんて、驚きでした。時給じゃなく、「1本いくら」という報酬体系だったのですが、発注側がよく分かってないから、複雑なものもすごく簡単なものも1本1万円とか(笑)、学生からすると破格の値段です。そうなると、「生産性を上げよう」というようなモチベーションもめちゃくちゃ上がるんですよね。「仕事って、つらい時間と引き換えにお金をもらうことじゃないんだ」とそこで気付きました。
長谷川: そんな大学時代を経て、新卒で入った会社はどういう感じでした?
倉貫: 大学のときに学生ベンチャーでもアルバイトをしていて、それもすごく楽しかったので、卒業後にそこに就職する――という選択肢もありました。でも、「大企業のようなところを1回も経験しないままというのは、どうなんだろう」という迷いもあって。就職氷河期だったから、大きな会社に入るのは新卒の時しかチャンスがないと思っていたんですね。
それで、なるべく大きくてシステム開発ができるところ、ただし親会社の意向に振り回されるのは嫌だから独立系のSIerにしようと、最終的に選んだのがTISという会社でした。
長谷川: TISはどうでしたか?
倉貫: 楽しかったです。
長谷川: それは周りも? それとも倉貫さんが楽しくやっていたということですか?
倉貫: 少なくとも僕は楽しかった(笑)。ずっとゲーム感覚でやっていましたから。楽しいかどうかって、自分の仕事の仕方次第だと思いますよ。
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