GRのコペンとダイハツ・コペン:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
日本のスポーツカーの中で、おそらく実力が最も侮られているのはダイハツ・コペンではないか? 筆者は以前からそう思っている。出来上がった2代目コペンは、クローズドコースでゼロカウンタードリフトができるような見事なバランスだった。山道を気持ちよい速度で走っても、ステアリングのインフォメーションが豊富で楽しい。こういうクルマが侮られている内は、日本の自動車文化もまだまだだと思う。
結局どちらが良いのか?
最初にハンドルを握ったのは、大磯ロングビーチの広大な駐車場にセッティングされたスラロームとダブルレーンチェンジコースだった。コペン・ローブと、ブランドパーツを組み込んだコペン・ローブS、それにコペンGRスポーツだ。
結果からいえば、3台はそれぞれ味が違う。素のコペンは、他の2台と比べて限界が少し落ちる。しかしタイヤの接地が落ちていく感じがステアリングを通して鮮明に分かり、「ここでスロットルを緩めて巻き込ませてやろう」とか、「もう少し舵角(だかく)を入れて曲げてしまおう」とか、そういうクルマとの対話が低速から味わえる。ローブSは少しダンパーの減衰が上がっている感じで、チューニングカー的な気分が楽しめるが、スポーツカーとしての実力が違うのかと問われたら、演出はともかく実力は「ほぼ変わらない」と答えると思う。むしろコペンとしての純粋さは素のローブの方が高いと感じた。ドレスアップカーとして楽しむ感じだろう。
では本命GRはどうだったか? 筆者は、恥ずかしながら後で聞くまでタイヤ銘柄が違うのだと思っていた。そのくらいグリップのレベルが違う。シャシーの勘所に強化ブレースを加えて、ボディ剛性、ひいてはタイヤの支持剛性が大幅に向上した結果、タイヤの接地を正確にコントロールできるようになっている。シャシー補強はまた、ホイールのストロークをキレイに動かすことにも効いている。代わりにダンパーの減衰は落としてあるので、外観と裏腹に乗り心地は一番良い。
ではスラロームはどうだったのかといえば、GRが圧倒的に速かったし安定していた。もうステアリングを切るだけでいい。今回のコースでは荷重のことを考える必要はないし、アクセルやブレーキでラインを変えてやれるほど挙動が変わらない。恐ろしくレベルが高い。コンペティティブな状況ならGR一択だ。ただし、操って面白いのはどっちかといえば筆者は素のコペンに軍配を上げる。
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