「安さ」という“王道”を捨てたマツキヨ 裏から支える謎の会議「コミッティ」とは?:商品企画に店舗スタッフを起用(3/3 ページ)
ココカラファインとの経営統合検討に向けた協議を開始したマツモトキヨシ。展開していたプライベートブランド「MKカスタマー」を2015年に「matsukiyo」へリブランディング。高品質、高付加価値商品の充実を進めている。ドラッグストアといえば「お買い得」のイメージも強いが、王者マツキヨはなぜ「安さ」を捨てたのか。
メンバーの9割を店舗スタッフで構成する「コミッティ」
客観的なデータだけでなく、「生の情報」も企画に生かしている。17年から「PBアイデア創出コミッティ」と称して、全社から商品企画に関わりたい従業員を公募。担当者の櫻井壱典商品企画室商品開発課課長によると、メンバーの9割が店舗で日々お客と接しているスタッフだという。「手を挙げてもらえれば、可能な限り誰でもメンバーに入ってもらっている」と話す。
コミッティは任期を1年として、毎月2回、商品ジャンルごとに分けたチームで企画を出し合っている。それぞれのチームには開発担当者が入っており、アイデアが実現可能かどうか、技術面や法務面からも精査しているという。重視しているのは「ありそうでなかったもの」や「うたっていなかったアピールができるもの」だ。そのために、日々お客と対面して困りごとやニーズを知り尽くしている店舗スタッフを積極的にメンバーとしている。
18年からコミッティへ参加している坂本恭子氏は、マツモトキヨシ松戸新田店の店舗スタッフ。薬剤師の資格も持っている。「今どういう商品企画が動いているかが可視化できるので、会社全体の透明性もより向上したと思う」と話す。「『安さ』で勝負していたところから、高品質高付加価値商品へと注力分野が変化していくのを間近で見てきて、スタッフでありながら自分も1人のマツキヨファン。両方の視点からコミッティに参加できている」。従業員としても、消費者としても開発に携わることで、「痒い所に手が届く」商品のアイデアが日々生み出されている。
まだ立ち上げから期間が短いため、商品化したものはそう多くはないが、代表的なものとしては「日本薬局方 白色ワセリン ワセリンPRO」(第3類医薬品、980円)が挙がった。特に敏感肌の人やアトピー肌の人から、自宅で使用するスキンケア商品に対する要望がよく出ていた。スキンケア商品はこれまでにも販売していたが、より乾燥度の激しい人が使うような成分を含んだものはこれまでになかった。医薬品のプロである薬剤師資格と、日々接している生の声を上手に融合して生み出した商品だ。
matsukiyoはまだ商品数こそ少ないが、マツモトキヨシの新たな路線を支えるブランドとしてさらに注力していくという。インバウンドのお客も多く、海外での認知も広がっている。高橋広報部長はこう話す。「少子高齢社会では、若いファンを作り続けていかなければならない。価格だけを重視して商品を作っても、より安いものがあれば簡単にそちらへ流れてしまう。それであれば、われわれは『価値観』で戦っていく」
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