同一労働同一賃金がまだまだ日本で浸透しない、これだけの理由:欧米のようにはいかない(4/4 ページ)
2020年から開始する「同一労働同一賃金」。期待を集める一方で、“真”の意味で浸透していくにはまだまだハードルがありそうだ。どういったところに課題があるのか。しゅふJOB総研所長を務め、労働問題に詳しい川上敬太郎氏が斬る
どういったケースが「アウト」になるのか
実際、日本に同一労働同一賃金を導入する際の議論においても、欧米との違いを認識した上で、その利点を日本のシステムにどう取り入れていくかという観点からの検討がなされました。
ただ、雇用労働システムの根幹に関わるテーマだけに、有識者の間でも意見が分かれたようです。喧喧囂囂(けんけんごうごう)の議論と紆余(うよ)曲折を経て、18年12月28日に厚生労働省から発表されたのが同一労働同一賃金ガイドラインです。厚生労働省の公式Webサイトには、次のように記されています。
「本ガイドラインは、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものです。同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを示しています」
先にも書いた通り、同一労働同一賃金そのものというよりは、そのためのステップとして不合理な待遇差をなくそうとする内容になっています。有識者の方々が議論の末に絞り出した、苦肉の策だと言えます。ガイドラインの大まかな構成は、基本的な考え方と具体例の2つに分かれています。具体例には問題になる例とならない例が記されており、
(1)基本給
(2)賞与
(3)各種手当
(4)福利厚生
の4つについてまとめられています。1つ抜粋すると、基本給の「問題になる例」として、以下のように書かれています。
(問題となる例)
基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの経験を有することを理由として、Xに対し、Yよりも基本給を高く支給しているが、Xのこれまでの経験はXの現在の業務に関連性を持たない。
簡単に説明すると、その業務と無関係な経験しかないのに、勤続年数が長い正社員という理由だけで、非正規社員より基本給を高くするのは問題ですよ、ということです。20年4月以降、各企業はこれらの事例に照らし合わせながら不合理な待遇格差が生じないように取り組んでいくことになります。
と、ここまで同一労働同一賃金について書きました。しかし、仮にさまざまな困難を排して同一労働同一賃金を実現できたとしても、実はまだ解決できない問題があります。後編では、「同一労働同一賃金を目指せばそれで良いのか?」という問いについて考えてみたいと思います。
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