同一労働同一賃金がまだまだ日本で浸透しない、これだけの理由:欧米のようにはいかない(3/4 ページ)
2020年から開始する「同一労働同一賃金」。期待を集める一方で、“真”の意味で浸透していくにはまだまだハードルがありそうだ。どういったところに課題があるのか。しゅふJOB総研所長を務め、労働問題に詳しい川上敬太郎氏が斬る
日本式は「絶対悪」ではない
ただ、気を付けるべきことがあります。同一労働同一賃金の実現を目指すからといって、日本の雇用労働システムを根底から否定する必要はないという点です。日本のシステムは悪く言われることもありますが、メリットもあります。
例えば、日本の失業率は世界の中でも低く推移しています。EU統計局によると、19年10月のEU28カ国失業率平均は6.3%です。最も高いスペインでは14%を超えています。一方、総務省の「労働力調査」によると日本の19年10月の失業率は2.4%。圧倒的に日本の方が失業率は低くなっています。日本の失業率の低さにはさまざまな要因が考えられますが、職能型であることの利点も影響していると思います。
仮に、ある社員の職務をアウトソーシングすることになったとします。職務型の考え方では、その職務がなくなってしまうことは給与を支払う理由が失われることであり、解雇の対象になることを意味します。
しかし職能型の考え方であれば、その人が有する能力に給与を支払うので、企業側はその人ができる別の仕事を社内で手配するべく動きます。有事の際に社内で調整することを基本とする性質は、企業別労働組合の機能ともマッチしています。
これは1つの例ですが、日本の雇用労働システムが必ずしも欧米より劣っているとは一概に言えません。日本のシステムの良い点を生かしながら、欧米の良い点も上手に取り入れるというスタンスが望ましいのだと考えます。
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