「ヤクルトおじさん」が存在した! ヤクルトレディのルーツと謎に迫る:どこからやってきて、いくら稼いでいるのか(2/3 ページ)
職場や家庭に訪問販売するヤクルトレディ。時折、重そうにカートを押しながら道を歩いているところも見かける。いったい、ヤクルトレディがどこからやってきて、いくら稼いでいるのか。また、「ヤクルトおじさん」は存在するのか。ヤクルトレディの謎に迫る。
そもそも、ヤクルトレディたちはどこからやってくるのか。筆者の職場にもヤクルトレディが販売に来るが、大きなカートを引いてやってくる。あるときには、職場前の坂を重そうにカートを押しながら歩いているところを見たこともある。
津村氏は「カートを押すヤクルトレディは、ほんの一握り。最も多いのが、車での販売」と話す。ヤクルトレディは、全国2400カ所ほどの配達センターを拠点としている。そこから、あるレディは車で、あるレディはカートで出発するのだという。
「ヤクルト保育所」は全国に約1000カ所以上も
ヤクルトレディは「従業員」としてヤクルト本社や販売会社に雇われているのではなく、業務委託を受けた「個人事業主」として働いている。その一方で、ヤクルト本社は販売事業を丸投げしているわけではない。「働く主婦」を最大限にサポートするためのサービスを整えている。その1つが全国に1000カ所以上存在する「ヤクルト保育所」だ。
もともと、ヤクルトレディは子どもが寝ている時間帯に仕事を済ませられるよう、早朝に活動していたという。それがだんだんと日中へシフトしていくようになり、働いている時間に子どもを預ける必要性が生じてきた。ヤクルトレディの拠点である配達センターには、同じような境遇の主婦も多く、手の空いている人が他の人の子どもの面倒を見るなどしていたという。
こうした背景を受けて、70年ごろからヤクルト保育所ができ始める。多くは配達センターの近くにあり、中にはセンター併設の保育所もあるという。ヤクルト保育所では、国の定める「認可外保育施設指導監督基準」「保育所保育指針」に準拠しているだけでなく、独自の「ヤクルト保育所基準」も制定。多くの働く主婦が「待機児童問題」に頭を抱える中、手厚いサポートをしている。
その他、健康相談や育児、介護の相談窓口も設けるなど、働きやすい環境づくりに注力している。
敏腕“レディ”はいくら稼ぐ?
ところで、ヤクルトレディの中でも「敏腕」なレディは、いったいどれくらいを稼いでいるのだろうか。津村氏によると、ヤクルトレディは完全歩合給。売った本数などに応じて、決まった取り分がヤクルトレディの収入となる。
多くのヤクルトレディは、主婦として扶養の範囲内で働いていることから、ほとんどが「10万円以内」に収まっているという。詳しい金額は明かさなかったが、中には1カ月で「数十万円」を稼ぐような人もいるのだとか。また、都市部よりも車で回ることの多い地方の方が、運搬できる商品量が多く、売り上げが高い傾向にあるという。
成績が優秀なレディは毎年開催する「世界大会」で表彰を受ける。現在、ヤクルトレディは14の国と地域で活動しており、世界大会にはよりすぐりのヤクルトレディが集まる。
それだけでなく、ヤクルトレディの中には配送センターのマネジャーとなったり、販売会社の役員になったりと、実はさまざまなキャリアを構築している人がいるのだという。
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