「ヤクルトおじさん」が存在した! ヤクルトレディのルーツと謎に迫る:どこからやってきて、いくら稼いでいるのか(3/3 ページ)
職場や家庭に訪問販売するヤクルトレディ。時折、重そうにカートを押しながら道を歩いているところも見かける。いったい、ヤクルトレディがどこからやってきて、いくら稼いでいるのか。また、「ヤクルトおじさん」は存在するのか。ヤクルトレディの謎に迫る。
ヤクルトレディの採用は「スカウト」
ヤクルトレディはスカウト方式で採用することが多いのだという。販売先を訪問したヤクルトレディが、「この人は(ヤクルトレディを)できるかもしれない」と思ったら、職場見学などをしてもらう。その後、面接などを経てヤクルトレディとなる。背景には、「地域密着」の考えがある。
「ヤクルトレディに求めるのは『売る能力』ではない。地域の方々とコミュニケーションを取り、欲を言えば『愛される』人材が向いている」と津村氏は話す。「ヤクルトレディとお客さまとの関係性は『届ける‐買う』の関係を超えている。あるセンターでは、お客さまからいただいた野菜がいっぱい置いてあるところもある。その地域で愛される人が多いからこそ、また同じように愛される人材を発掘することができる」
ヤクルトレディは販売するだけでなく地域の見守り活動も担っている。例えば「愛の訪問活動」は単身で生活するお年寄りをヤクルトレディが訪問し、安否の確認や話し相手となる取り組みだ。72年に活動を開始し、94年には厚生労働省から表彰も受けている。それだけでなく、全国の自治体や警察と連携し、訪問先のお客に異変を感じた際には警察署に連絡するなどの活動も行っている。
ヤクルト“おじさん”はいるのか
ちなみに、ヤクルトレディならぬ、「ヤクルト“おじさん”」は存在するのだろうか。津村氏に聞いたところ、「数百人ほど、販売会社に所属する男性配達員は存在する」と回答があった。ただ、ヤクルトレディのような制服を着て、職場や家庭へ定期的に訪問販売するような形ではなく、「昔の名残」(津村氏)で郡部などを担当する人がほとんどだという。
郡部へは物流コストなどの問題で、定期的に商品を届けることにハードルがある。そこで、個人商店を営んでいる人など、大きい冷蔵庫を持っているような配達員のところへまとめて商品を届ける。そして、配達員は各家庭へ商品を置いて回るのだという。コミュニケーションや地域の見守りをも担うヤクルトレディとはやや異なり、昔ながらの「配達員」というイメージが近い。
女性の社会進出を受けて増加してきたヤクルトレディだが、最近は増加数に歯止めがかかってきている。多いときには国内だけで5万人を数えたが、今では国内のヤクルトレディは3万人ほど。ヤクルトレディを組織化した63年から50年以上が経過し、フルタイムで勤務する女性も増えている。今後は、もしかしたら「ヤクルトおじさん」が増えていくのかもしれない。
関連記事
- 課長の平均年収は932万円、部長は? 外資との「格差」も明らかに
日本で活動する企業の報酬状況が発表。日系企業と外資系企業合わせて679社が参加した。調査結果では課長職や部長職の平均年収も明らかになった。日系企業と外資系企業の報酬格差も合わせて発表し、特に役職者以上で顕著な開きがあった。 - 一風堂が「ラーメン1杯でビール最大5杯無料」を急に変更 ドタバタ劇の裏側
一風堂がラーメンを注文するとビールがサービスされるキャンペーンを展開。8月19日から開始したが、開始翌日にキャンペーン内容を急遽変更。お客が殺到したことが理由とのことだが、どれくらいの反響があったのか? - 満員電車にNO! 優雅に座ってバス通勤、広がる? 朝食付きサービスも
ビジネスパーソンの悩みの種「満員電車」。テレワークやフレックス制度の導入でやや緩和しているが、まだまだ朝夕の混雑は激しい。そんな中、郊外などから都心へ向かう優雅なサービスが出始めた。中には朝食、コーヒー付きのものも……。 - 加害者は中高年男性がほとんど? 従業員へのハラスメント「カスハラ」調査
接客業を中心に問題になっている「カスハラ」。気に入らないことがあった際に、従業員に対して暴言や暴行を加える言動を指す。被害者の声を見ると、加害者は中高年男性が多いようだ。また、接客業経験者の方が、従業員に対して厳しい目を注いでいる傾向も。 - 「無駄なことをやり続ける」 喫茶店不況の中、創業55年のレトロ喫茶が人気のわけ
喫茶店の倒産が相次いでいる。東京商工リサーチによると、2019年1〜8月の期間で倒産した喫茶店は42件。過去20年の中で最多ペースに並ぶ勢いだ。こうした中で、新宿にあるレトロな“純喫茶”が9月、新たな店を西新宿に出店した。店名は「珈琲西武」。新宿三丁目にある1号店は1964年にオープンし、今年で55年目を数えるほどの老舗純喫茶だ。喫茶店チェーンでは、200円台からコーヒーが飲める店も増えている中、珈琲西武のコーヒーは最低でも600円。それでも、平日や休日を問わず入店待ちの行列ができるほどの人気ぶりだという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.