NISA制度が税制改正で超変化 次の争点は「株とFX」の損益通算?:古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」(1/3 ページ)
自民党がまとめた2020年度税制改正大綱では、NISA周りの制度が大きく変わることが明らかとなった。今回は、NISAをはじめとした金融商品取引をめぐる制度改正が、資産運用にどのような影響をもたらすかを確認していこう。
自民党がまとめた2020年度税制改正大綱では、NISA周りの制度が大きく変わることが明らかとなった。今回は、NISAをはじめとした金融商品取引をめぐる制度改正が、資産運用にどのような影響をもたらすかを確認していこう。
ジュニアNISAは撤廃、新NISAは”長期重視”に
今回の税制改正で最も重要な点は、新NISA制度への移行である。これは、現行の「一般NISA」を「新NISA」へ移行させたうえで、制度の5年延長を定めたものだ。制度が想定どおり浸透しなかったジュニアNISAは順次撤廃となり、23年に口座開設の受付が終了する。
新NISA制度は、1階部分と2階部分の2段階で構成される。1階部分は、従来の「つみたてNISA」と同じ考え方の枠で、年間20万円を金融庁が選定した投資信託等で運用できる。非課税期間の5年で最大100万円を積み立てることが可能だ。1階部分は、非課税期間終了後につみたてNISAに移管可能になる。
2階部分が、これまでの一般NISAの考え方を受け継いだ部分だ。年間102万円までの投資が可能で、合計510万円まで非課税枠で投資できる。しかし、2階部分を利用するにあたっては、1階部分の利用が前提だ。既存のNISA口座開設者や、投資経験者に関しては2階部分のみの利用も可能となるが、その場合、新NISAでつみたてられる金額は毎年102万円までとなり、従来よりも毎年18万円ほど投資可能枠が少なくなってしまう。
ここで気になるのが、なぜ2階部分の投資可能額が100万円ではなく102万円なのかという点だろう。ある業界関係者は「ジュニアNISAが廃止された分の”おまけ”ではないか」という見方をしているようだ。個人的な見解としては、100万円だと12カ月でキリよく分割できないことも要因と考える。102万円であれば、毎月の投資額は8万5000円で、このキリの良さが2万円追加の背景となったのではないだろうか。
なお新NISAでは、これまで問題視されていた「NISAでバクチ」対策にも言及されている。主に「インバース」や、「ダブルブル」「ダブルベア」といった名前が付いている短期志向のETFや投資信託は、制度対象外となる可能性が高いため、購入の際には注意が必要だ。
関連記事
- つみたてNISA延長へ 38年以降も積立可能に
つみたてNISAの積み立て期間が延長となる。11月22日、日経新聞が報じた。現在、積み立て可能期間は2037年までだが、これを延長し、いつから始めても20年間非課税となる。ただし、積み立て開始年は37年が最後だ。 - 英国では1億超の非課税枠 つみたてNISAの恒久化目指す 金融庁遠藤長官
金融庁主催の投資家向けイベント「つみたてNISAフェスティバル 2019」に登壇した金融庁の遠藤俊英長官が「つみたてNISA」の拡大に意欲。また運用型保険商品の透明性や、決済など機能別規制のあり方について話した。 - Slackも活用、「直接上場」がIPOよりも優れているワケ
近年、注目を集めている金融商品取引所への上場方法が「直接上場」という手法だ。世界的に一般的な手法である「IPO」と比較すると、直接上場は新株の発行(資金調達)を伴わない点で違いがある。直接上場のメリットはどのようなものがあるのだろうか。 - トヨタやソニーも過去に失敗 異業種の証券会社設立、成功のカギとは?
昨今、異業種からの証券事業参入が相次いでいる。しかし実は、異業種の証券事業参入は90年代末から00年代半ばにかけて度々みられた現象で、当時の大半の新規事業者は撤退を余儀なくされた。証券会社さえ作れば成功するという想定では足りず、証券事業を通じて本業の付加価値増加を伴うサービスであることまで求められる。 - 証券会社が取引所のシェアを奪う? 実は超競争業界の「証券取引所」
日本の株式取引では、日本取引所グループ傘下の東証一強といっても差し支えない。しかし決して安定しているとはいえない。それは、証券会社との競争と取引所間の競争が激化しているためだ。PTS、そしてダークプールのシェアはすでに1割にも達し、さらに海外ではデリバティブの得意な取引所が勢力を強めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.