ドコモ代理店「クソ野郎」騒動に潜む、日本からブラック企業がなくならないそもそもの理由:労働環境を悪化させる“ブラック乞客”とは(4/5 ページ)
NTTドコモ代理店で起こった「クソ野郎」問題が新年早々大きな問題になった。代理店運営の兼松コミュニケーションズだけでなく、NTTドコモも謝罪文を出す事態に。問題の真相はどこにあるのか。労働問題に詳しい新田龍氏はに“ブラック乞客”の存在を指摘する。
企業間でも問題になる「ブラック乞客」
同じことは、接客業のみならず、企業間の取引についても当てはまる。エン・ジャパンが調査した「中小企業の残業実態」によると、「残業が発生している主な理由」のトップは「取引先からの要望(納期など)にこたえるため」(51%)であった。取引先に残業を強いる。まさにこれも「ブラック乞客」による被害であろう。
筆者は働き方改革推進による労働環境改善サポートが本業であるが、各地で経営者の皆さまに「日本はもう10年以上前から人口が減少しており、これから若い働き手はますます不足します」「そんな中、『何事も残業でカバーする』というやり方では取り残されますよ」と警鐘を鳴らし続けている。もちろん多くの方は危機感を抱いて行動を起こしていただけるが、中には次のように反論されるケースもある。
「それは分かるけど、実際残業をなくすなんてとてもできないよ! ウチはお客さんからの急な依頼にもすぐ対応することで選ばれているんだから!」
お気持ちはよく分かる。実際、私自身もブラック企業勤務時代はまさにそのようにして仕事をとってきていたからだ。しかし結果的に疲弊してしまった経験があるからこそ、今は嫌われ役を覚悟してこのようにお返ししている。
「それは『選ばれている』のではなく、『あの会社なら多少理不尽な要求でもやらせられるだろう』となめられてるんですよ。御社がやるべきなのは『残業でカバーする』ことじゃありません。『ブラック乞客を切る』ことと、『品質で選ばれる』ことです」
ブラック乞客の理不尽な要求を受け入れてしまうと、今度はそれに間に合わせるために自社の従業員に理不尽な長時間労働を強いることになってしまう。すなわち、理不尽が乞客から自社へ伝染してしまうのだ。
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