膨らむ経済損失と不満 世界で始まった「コロナ訴訟」:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
緊急事態宣言が5月末まで延長され、経済活動の停滞が続くことになった。米国などでは、中国政府に損害賠償請求の訴えを起こすケースが増えている。また、企業や大学までも訴えられた。不満がさらに高まれば、日本でもそのような動きが増えてくるかもしれない。
ゴールデンウイークの真っ只中だった5月4日、安倍晋三首相が記者会見を開き、全都道府県を対象に緊急事態宣言を5月いっぱいまで延長することを発表した。
途中で見直しもあり得るようだが、個人の行動が大幅に制限され、経済活動が滞る期間がまだ続くことになった。新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるには仕方がない期間ということだが、一つ気になるのは、政府が説明を尽くしていないと思えてならないことだ。
例えば、首相が直接、国民に説明を行える記者会見だ。これまでに首相の記者会見が中途半端に切り上げられてしまうという批判が出ており、多少は改善されているようだが、それでもまだ十分だと感じない。今の日本政府にとって、新型コロナ対策やそれに絡む政策よりも重要なことはないはずだ。経済活動停滞で疲弊し、不安を抱いているビジネスパーソンらも腑に落ちないことは多いだろう。
5月4日の会見では「この後に外交日程がある」と会見を切り上げている。実は政府関係者たちの間では、何日も前から、緊急事態宣言の1カ月程度の延長が決まったことは知られていた。つまり、日程を調整する時間もあったはずだ。
そもそも、その外交日程は、日本国民の「私権制限」をお願いすることよりも重要なのか。相手の国外の関係者も、「国民に真摯に向き合って説明を尽くすために予定を変更したい」と言えば、快く変更を受け入れるだろう。新型コロナ対策は、世界が共通して懸念している問題なのである。
また安倍首相は、5月6日にはインターネットのライブ配信で1時間ほど質問に答えた。だが時間が短いだけでなく、ネットにアクセスができて使えるデータ量に余裕がある人に参加が限られることから、首相から直に言葉を聞きたい老若男女に広くリーチできるテレビ中継の記者会見とは違う。
とにかく、政府の動きに不満を持ったり、いら立ちを募らせているのは、何も日本だけではない。国外でも当然同じような声が上がっているが、世界を見渡すと、その怒りの矛先は「損害賠償請求」になっているケースも出てきている。国家や自治体相手だけでなく、民間企業やメディアなども訴えられている。そしてこの動きは、今後、大きなうねりになる可能性もある。
関連記事
- 米国の新型コロナ“急拡大”で迫りくる「中国復活」の脅威
世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大している。日本の経済活動において影響力が大きい米国でも、多くの州で非常事態宣言が出された。米国は今、どのような状況なのか。このまま感染拡大が続けば、先に復活した中国の力が増すことにもつながりかねない。 - オンライン教育「周回遅れ」の日本 “コロナ休校”で広がる、埋められない空白
新型コロナウイルスの影響で休校が続く各国では、オンライン教育の提供が進んでいる。PCやルーターなどを無償提供して環境を整え、通常通りの時間割でオンライン授業を実施している国もある。日本も「教育の空白」を広げないための方向性を示すことが必要だ。 - “テレワーク急増”が弱点に? 新型コロナで勢いづくハッカー集団の危険な手口
新型コロナウイルス感染拡大で世界が混乱する中、それに便乗したサイバー攻撃が激増している。中国やロシアなどのハッカー集団が暗躍し、「弱み」につけ込もうと大量の偽メールをばらまいている。新型コロナに関する情報と見せかけたメールには注意が必要だ。 - 新型コロナで過酷さ増すトラック業界、「女性ドライバー」が期待ほど増えない理由
新型コロナで過酷さが増している業界の一つが物流だ。人手不足と高齢化を解決するために女性トラックドライバーへの期待が高まっているが、国交省が2014年からキャンペーンをやっているのに増えていない。まずは「トラガール」という呼称から見直し、男性本位の文化を変えるべきでは。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.