鉄道業界に「バーチャル背景」ブーム 外出自粛で薄れる存在感、“つながる”一手に:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
テレワークの普及で広まったオンライン会議ツール。鉄道各社が相次いで「バーチャル背景」を配布している。外出自粛によって鉄道の存在感が薄れる中、ビジネスパーソン向けコンテンツを発信することで、親しみを持ってもらう狙いがあるようだ。
オンライン会議ツールで使える「バーチャル背景」を無償配布する鉄道事業者が急増している。いったい何が起きたのか。
外出自粛、接触回避、在宅勤務導入拡大を背景に、オンライン会議が急速に普及した。在宅勤務でオンライン会議となれば、背景に映る生活空間が悩みのタネ。片付いてなければみっともないし、だらしない性格だと思われそう。深刻なテーマの会議でオモチャやアイドルグラビアのポスターが映り込んでもマズい。
そんな事情を察して、バーチャル会議ツールには「背景を設定する」という機能がある。テレビドラマのように、人物と風景を合成して、まるでロケ撮影をしたように見せる特殊効果だ。これで生活感を消し、会議に集中できる。会社の会議を疑似体験するなら、自分の会社の背後の写真を使えばリアルだと思うけれども、そこはちょっとした遊び心の余地がある。バーチャル会議ツールを利用した「オンライン飲み会」という遊びも普及しており、序盤は壁紙やエフェクトを変更して遊ぶ流れがお約束である。
鉄道会社は、大型連休前に「おうちで楽しむ鉄道コンテンツ」として、塗り絵やペーパークラフトの配布ブームがあった。外へ遊びに出掛けられない。電車に乗りたいけど乗れないという電車好きなお子様向けサービスだ。マクドナルドのハッピーセットは「ハンバーガーを味覚の原体験として末永く親しんでもらう」という意味があるという話も聞く。鉄道会社の子ども向けコンテンツも「子どもの頃から電車好きになってもらえれば、末永く電車や沿線のファンになってもらえる」という意味になるだろう。
その次の施策として、ビジネスパーソン向けのアプローチが「バーチャル背景」かもしれない。そこで今回は、鉄道各社のバーチャル背景を紹介しつつ、その意図を考察する。……と、ここまで堅苦しく始めたけれど、まずは鉄道事業者のバーチャル背景カタログとしてお楽しみいただきたい。
関連記事
- 「電車通勤」の歴史と未来 ITとテレワークで“呪縛”は解けるか
新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークが広がった。外出自粛から解放されたときにはどうなるか。それは「電車通勤」の在り方に関わる。長時間の満員電車が当たり前というのは“呪縛”だ。電車通勤が根付いた歴史を振り返ってみると…… - 電車を止めよう――勇気を持って主張したい、3つの理由
緊急事態の今、感染拡大を食い止め、医療と社会を立て直すために必要なのは、電車を止めることだ。そこまでするべき理由は「感染」「名誉」「経営危機」の3つ。大変なことではあるが、「通勤を止める」「生活費を支給する」方法がないわけではない。 - 新型特急「Laview」が拓く、“いろいろあった”西武鉄道の新たな100年
西武鉄道は新型特急「Laview」を公開した。後藤高志会長は「乗ることを目的とする列車に」と強調。西武特急に対する危機感が表れている。この列車の成功こそ、“いろいろあった”西武鉄道を新たな100年へと導く鍵となりそうだ。 - 小田急ロマンスカー「GSE」が映す、観光の新時代
小田急電鉄は来春から導入する新型ロマンスカー70000形「GSE」を発表した。第1編成が3月から、第2編成は第1四半期早期の導入予定。製造はこの2本の予定だ。フラッグシップの特急を同じ車両で統一しない。小田急電鉄の考え方が興味深い。 - 東京圏主要区間「混雑率200%未満」のウソ
お盆休みが終わり、帰省先から首都圏に人々が帰ってきた。満員の通勤通学電車も復活した。国も鉄道会社も混雑対策は手詰まり。そもそも混雑の認定基準が現状に見合っていないから、何をやっても成功できそうにない。その原因の1つが現状認識の誤りだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.