鉄道業界に「バーチャル背景」ブーム 外出自粛で薄れる存在感、“つながる”一手に:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
テレワークの普及で広まったオンライン会議ツール。鉄道各社が相次いで「バーチャル背景」を配布している。外出自粛によって鉄道の存在感が薄れる中、ビジネスパーソン向けコンテンツを発信することで、親しみを持ってもらう狙いがあるようだ。
会議をひっくり返す、高松琴平電気鉄道
筆者が知る範囲で、最も早くバーチャル背景を提供した会社は「高松琴平電気鉄道」だ。同社の公式駅員として人気のキャラクター「ことちゃん」を使っており、電車は出てこない。ことちゃんは、かわいい外観とは裏腹に風刺の効いたジョークも飛ばす性格が人気で、Twitterのフォロワーは5万人以上。鉄道に寄り添いつつも、鉄道業界を超越したコンテンツといえる。
背景の図柄は2種類で、「ぶっかけうどんかいぎ」はうどんごとひっくり返ることちゃんと、だし汁を被る妻のことみちゃん、娘のことのちゃんが描かれる。ちゃぶ台返しの場面にも見える。議決をひっくり返したい気持ちを暗に示すときに使いたい。「ことこときしゃかいけん」は、記者発表会のフォトセッションステージを模した。よく見るとパネルの1枚が外れてことちゃんが顔を出している。公開日は4月10日で、4月9日に公開されたソフマップの「例の壁」のパロディーだとすると仕事が早い。
ロマンスカーの運転席からの眺めも、小田急電鉄
小田急電鉄は、大型連休開始直後の4月30日にバーチャル背景を公開した。車両工場や駅構内のほか、最新型ロマンスカー「GSE」の運転席もあり「乗った気分になる」と話題になった。関連会社「箱根そば」の店内や、改築された片瀬江ノ島駅、江の島が見える海岸などリゾート気分の作品もある。
5月12日に10枚が追加され、現在のところ27枚。新作には車両基地内部、ロマンスカーの並び、関東三大イルミネーションの一つ「江の島 湘南の宝石」や、「小田急センチュリーサザンタワー高層階の風景」がある。鉄道ファン向けと一般向けのバランスが取れたラインアップだ。
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