検察庁法騒動から見る、Twitterの“大きすぎる影響力”と功罪:世界を読み解くニュース・サロン(5/6 ページ)
政府が検察庁法改正案の成立を見送った。Twitterで巻き起こった反対運動がその背景にある。政府にも影響を与えるTwitterのプラットフォームをどう捉えるべきか。海外では大量の偽アカウントが暗躍しているのが現実。実態を知った上でビジネスにも使うべきだ。
偽情報がより早く拡散、ビジネス情報も
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは18年、Twitter社の協力を受けて、投稿や拡散について徹底的に研究し、その結果を公表している。それによれば、Twitterでは、フェイクニュースや偽のうわさ話は、正確な話よりも断然早く拡散され、SNSにさらに深く浸透し、より多くの人の目に触れるということが判明している。またTwitterの偽情報は、本当の話よりもバイラルになる傾向が強く、平均して6倍早く人々に届くという。
このようなTwitterの特性(弱点?)を熟知しているユーザーは、事実かどうか曖昧な話をどんどん拡散し、人をだましてしまうこともできる。「安倍憎し」と考えている人たちは、安倍首相のネガティブな話であれば事実かどうか確認することなく乗っかり、リツイートする。特に、匿名でツイートできるとなれば、その行動に責任を感じることもないだろう。
仮に今回、「#検察庁法改正案に“賛成”します」という立場のユーザーの中にTwitterの特性に精通している人がいて、ボットやスパムなどを駆使して徹底したキャンペーンを実施したらどんな結果になっただろうか。
そんなSNSプラットフォームから盛り上がった「運動」をどこまで深刻に受け止めるべきなのか。メディアがそれを拾わなければ今回のようなうねりにはならなかったはずで、そういう意味ではメディアもTwitterの実態と、大量のツイートの意味をあらためて検証する必要があるのではないだろうか。
さらにこんな側面もある。MITの研究では、政治やエンタメ、テロなどと同様に、ビジネス関係の偽情報についても、事実より拡散されやすいという。
今回のケースは政治の話だったが、これはビジネスの世界にも当てはまる。広告やプロモーションなどでTwitterを活用するケースは非常に多いが、その実態を知ることは、Twitterのビジネス面での効果を再認識するきっかけになる。
会社や製品についてネガティブな評判があふれかえる場合もあるし、嫌がらせのようなツイートをされる可能性もある。それがボットなどでしつこく続けられるケースもあるだろう。
関連記事
- 米国の新型コロナ“急拡大”で迫りくる「中国復活」の脅威
世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大している。日本の経済活動において影響力が大きい米国でも、多くの州で非常事態宣言が出された。米国は今、どのような状況なのか。このまま感染拡大が続けば、先に復活した中国の力が増すことにもつながりかねない。 - 新型コロナでデマ拡散「インフォデミック」に踊らされない“リテラシー”とは
新型コロナウイルスが世界的に広がっている中で、「中国による生物兵器だ」といったフェイクニュースも拡散している。このような「インフォデミック」を警戒し、真偽不明の情報に惑わされないようにするために、リテラシーを持って行動することが必要だ。 - 膨らむ経済損失と不満 世界で始まった「コロナ訴訟」
緊急事態宣言が5月末まで延長され、経済活動の停滞が続くことになった。米国などでは、中国政府に損害賠償請求の訴えを起こすケースが増えている。また、企業や大学までも訴えられた。不満がさらに高まれば、日本でもそのような動きが増えてくるかもしれない。 - “テレワーク急増”が弱点に? 新型コロナで勢いづくハッカー集団の危険な手口
新型コロナウイルス感染拡大で世界が混乱する中、それに便乗したサイバー攻撃が激増している。中国やロシアなどのハッカー集団が暗躍し、「弱み」につけ込もうと大量の偽メールをばらまいている。新型コロナに関する情報と見せかけたメールには注意が必要だ。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.