コロナ禍での支払いの優先順位:集中連載 新型コロナで経済死しないための方法 (3/4 ページ)
零細経営者が切羽詰まるのはどういうときか? それは入金のあてがないか、極めて限られており、一方で支払いが多くてどうにもならない場合だ。特に商いのメインだった仕事が急に止まると、にっちもさっちも行かなくなる。だから借り入れなどで、一時的に残高が増えたからといって、気が大きくなってどんどん払ってはいけない。払う順番をよく吟味しなくてはならない。
支払いの順序
さて、いずれのケースでもそもそもお金には困っている。仮に、最後のケースで大きな融資を受けたとしても、最終的には返済しなければならないお金だ。だから一時的に残高が増えたからといって、気が大きくなってどんどん払ってはいけない。払う順番をよく吟味しなくてはならない。
多くの債務者は、税金や公的保険などの公租公課を優先して払う。次に銀行への返済だ。もちろん。払えるのであれば払えばいいのだが、そうはいかないからこの記事を読んでいるはずである。
今回のコロナショックでの支払い順番は、通常時と明確に違う。まず、政府が公租公課について猶予制度を設けた。なので制度の範囲において先送りにできる(税金が「戻ってくる・少なくなる・待ってもらえる」記事参照)。国税と地方税の徴収窓口に即刻相談して可能な限り先送りにすべきだ。
次に銀行に相談をしなければならない。これに際して、経営者が最も恐れるのは、「期限の利益」を失うことだ。期限の利益とは、多くの契約書に出てくる文言で、要するに支払い分割の期間の話である。毎月10万円ずつ、12カ月で返済する契約のものを、今すぐ120万円耳をそろえて返せといわれたとしたら返せない。そうなれば債務不履行となって、どこからも資金を用立てられなくなる。
個人と違って、会社というものは資金を運用して利益を上げるシステムなので、100万円を運用しても利益はせいぜい5万円とかなのだ。10万円稼いでいたら立派である。
わずかな利益が積み上がって貯まるのを待っていては、お金がかかる新しいビジネスがいつまでも始められず、会社が成長できないから、運転資金を借り入れて回す。借入の100万円は5万円を稼ぐための原資であって、これを一定期間貸してもらって、それが分割で支払えるからこそ事業は回る。
そういう状況下で、銀行に「経営状態が良くないんです」と相談に行ったら、援助を得るどころか、運転資金の即刻返済を申し渡されて詰んでしまうのではないか。こう考える経営者が多い。
しかし2009年の金融円滑化法の施行後、銀行もそういう無碍(むげ)なことはしなくなった。本来、銀行のビジネスが貸し出しに対しての金利収入である以上、自分が引き金を引いて金の卵を産む鶏を殺してしまっては元も子もない。ましてやコロナという特殊な状況下の今回に関しては、支払いの猶予や期間の延長など、いろいろな相談に乗ってくれる。何より、金融庁からそのようにお達しが出ている。
良くも悪くも、銀行はビジネスとしてお金を貸しているので、社会全体から見れば、貸したお金が返ってこないリスクは本業の中核の一部である。製品を納品したのにお金を払ってもらえない納品業者とは意味が違う。
そしてマキャベリ的な言い方をするならば、銀行はどうせ、彼らの基準を満たさない企業にはお金は貸してくれない。仮に今月末、信用に応えるために血の汗を垂らして返済しても、その後あなたの会社が貸し出し要件を満たさなければ「この間大変なのに一生懸命返してくれたから」といって条件を緩めてくれることはほとんどない。
だから、銀行の貸し出し要件を満たす会社であり続けるための努力には意味があるが、それを下回った場合に銀行返済を優先する意味はもはやない。
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