デバイスも自宅へ発送する徹底ぶり 「フルリモート」で入社式と新人研修を実施したサイボウズ、その裏側:2月時点で複数シナリオを想定していた(2/5 ページ)
新型コロナウイルスの影響を受け、入社式を延期したり、入社自体を後ろ倒しにした企業も少なくない。そんな中、サイボウズはフルリモートで入社式・新人研修を行った。デバイスの受け渡しだけは出社して行う企業がほとんどだが、サイボウズは新入社員の自宅へ送るほどの徹底ぶりを見せた。これまでにない取り組みで、どんな発見があったのか。
4月1日、入社式ではなくPCのセットアップから始まった
結局、状況は悪化し続け、新入社員のオフピーク出社も難しくなった。そうすると、最初からテレワークということになる。まず必要なのはデバイスの受け渡しだ。他社ではテレワークを導入したとしても、デバイスは「本社で手渡し」というところもあるのだが、サイボウズは完全リモートを徹底した。社内でセットアップし、新入社員宅に発送したのだ。
「新入社員がPCを取りに行くには、感染のリスクが高い電車に乗らなければいけません。僕ら担当者が2〜3人でオフピーク出社し、ぽつぽつと対応すればいいと考えました。これから入ってくる新入社員の安全を最優先して意思決定しました」(高木氏)
4月1日、従来の入社式であれば、まずは雇用契約書にサインしてもらい、それを青野社長に手渡して写真撮影するという流れになっていた。参加者は、人事のメンバーと社長と新入社員のみで、こぢんまりした部屋で行っていたという。
今回は在宅になったので、まずはPCのセットアップを行った。PCが使えなければ、入社式に出られないからだ。例年は、オフィスで先輩がつきっきりで作業するのだが、テレワークなので自分でやるしかない。人によっては難しい作業なので、同社のクラウドサービス「kintone」のゲストスペースにセットアップのマニュアルを公開した。万一、kintoneにもアクセスできない場合に備え、人事の人たちは自宅で電話待機をしたという。
2020年の新入社員は37人で、個別に対応しなければならない人は数人出たそうだ。情シスの担当者にもZoomでサポートに入ってもらい、例えば、パスワードが分からなくなった場合は、その場で初期化してもらうなどした。それでも30分くらいで対処できたという。
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