なかなか進まぬ「障害者雇用」 在宅勤務がカギになりそうなワケ:広がる「地域格差」(2/3 ページ)
18年4月に引き上げられ、21年にもさらなる引き上げが予定されている「障害者法定雇用率」。ただ、実際は達成できている企業がなかなか増えていない。多様性を持つ社会の実現に向けて、どういった打ち手を出していけばいいのか。リクルートオフィスサポートで障害者雇用に取り組み、都市部と地方部の企業と障害のある人をマッチングする事業会社「カラフィス」を設立した三井正義氏は、新型コロナの影響で浸透する「在宅勤務」がカギになると予想している。
これからは「在宅勤務」がカギに?
こうした状況に対して、三井氏は「在宅勤務」がカギになると考えている。
三井氏はリクルート出身。リクルートは、グループ会社のリクルートスタッフィングが障害のある人の就労を支援するWebサイト「アビリティスタッフィング」を運営したり、障害者雇用に関する「特例子会社」としてリクルートオフィスサポートを設立するなど、障害者雇用に積極的な姿勢を見せており、三井氏はリクルートオフィスサポートの役員を経て、2月にカラフィスを設立した。在宅勤務が障害者雇用によい効果を及ぼすと考えている背景には、リクルートオフィスサポート時代の経験がある。
三井氏がリクルートオフィスサポートで障害者雇用に取り組み始めたのは2012年ごろ。当時、身体障害がある人の雇用が中心だったが、その他にもさまざまな障害を抱える人の雇用を始め、身体障害、精神障害だけでなく、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者など「免疫障害」がある人の雇用も進めてきた。
それと並行して取り組んできたのが、在宅勤務の導入だ。特に身体障害がある人は通勤することが難しかったり、また精神障害がある人は突然会社に行くことができなくなったりしてしまうこともあることと、先述した都市部と地方部の採用格差が背景にあるという。
在宅勤務であれば、文字通り通勤せずに自宅から業務ができるため、こうした課題を一挙に解決できる。また、在宅勤務として採用する人には、東京都の最低賃金に合わせた時給を支払っているという。このことで、地方より高い給与水準となり、応募が集まりやすくなり、また働く人のモチベーション向上にもつながっている。その結果、2019年6月1日時点でリクルートオフィスサポートには全従業員384人のうち、8割以上の336人を障害のある人が占めている。
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