三ツ矢サイダー、コロナ禍の5月に「販売1割増」の背景:ロングセラーの戦略とは(2/4 ページ)
アサヒ飲料のロングセラー「三ツ矢サイダー」が好調だ。5月のブランド全体の販売数量は前年同月比12%増。その背景には、ブランド強化のための「新商品」「リニューアル」の取り組みがある。ロングセラーブランドならではの戦略とは?
“濃い味”の果汁炭酸がヒット
三ツ矢ブランドの販売を下支えしているのが、4月に発売した「三ツ矢 特濃オレンジスカッシュ」。発売1カ月後の5月初旬時点で、年間目標の5割に達する50万ケースを販売。ぜいたく感のある“濃い味”が若い世代に刺さった。
この商品について水上氏は「自信を持っていた」と語る。実は、5年ほどかけて企画やテストを行い、開発したという。
「無糖炭酸の市場が拡大する中で、果汁炭酸はダウントレンドに向かっていた。しかし、味わいを強化した高付加価値商品への揺り戻しは来ると考えて仕込んでいた」と水上氏は振り返る。“ぜいたくな味わい”が受け入れられるか試すため、2019年には、モモのピューレが入った「三ツ矢 くちどけもも」などのテスト商品を販売。それらが全て好調だったことから、その知見をもとに、注力商品として特濃オレンジスカッシュを開発した。「“濃くておいしい”を体現しやすい」オレンジのフレーバーで勝負に出た。
メインターゲットは20代男性。酸度と糖度のバランスによって「最もおいしく感じられる」(水上氏)というオレンジ果汁を20%使用し、ぜいたく感を打ち出している。
果汁炭酸の市場をみると、3月にはコカ・コーラが濃厚なブドウのピューレを使った「ファンタ プレミアグレープ」を発売。ヒット商品となっている。確かに、無糖炭酸が市場に定着する一方で、ぜいたくな味わいの需要も大きく、二極化しているようだ。
パッケージもターゲットを意識して、「三ツ矢サイダー」などとはイメージを大きく変えている。鮮やかなオレンジ一色の背景に、一目見ただけでは読めないほど大きな文字で商品名を入れた。水上氏は「“カップドリンク”を意識している」と説明する。タピオカなどのカップ飲料を手に持って歩く「スタイリッシュなイメージ」に近づけて、ターゲットである20代の嗜好を狙った。
他の新商品では、過去の三ツ矢サイダーを再現した「2020年限定復刻シリーズ」も好評だ。5月19日に発売した第3弾「三ツ矢サイダーライト」は、1984年に発売した「三ツ矢ライトサイダー」を現代風にアレンジした商品。発売1週間で約30万ケースを販売した。復刻シリーズは「他の商品と比べても、圧倒的に10代に売れている」(水上氏)という。“なつかしさ”よりも、若い世代が感じる“珍しさ”や“新鮮さ”が購入につながっているようだ。
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