三ツ矢サイダー、コロナ禍の5月に「販売1割増」の背景:ロングセラーの戦略とは(3/4 ページ)
アサヒ飲料のロングセラー「三ツ矢サイダー」が好調だ。5月のブランド全体の販売数量は前年同月比12%増。その背景には、ブランド強化のための「新商品」「リニューアル」の取り組みがある。ロングセラーブランドならではの戦略とは?
味を変更しない“大幅リニューアル”
主力の「三ツ矢サイダー」では、4月に大幅リニューアルを実施した。ただ、三ツ矢サイダーは「中味を変更しないアイテム」(水上氏)。大幅に変えたのはパッケージだ。
三ツ矢サイダーといえば、円柱状のペットボトルだが、今回のリニューアルではその容器に巻くラベルを一新した。従来よりもラベルの幅を短くして、中味の透明感をより印象的にしている。ちょっとした変化のように思えるが、この新ラベルには2つのメッセージが込められているという。
まずは「環境への配慮」だ。ラベルを薄く、短くすることで、1本あたりのラベル使用量を約55%削減。もともと備わっていた透明の液色やイメージカラーの緑と組み合わせることで、環境や暮らしに優しいイメージをより強く打ち出している。
そして、もう一つは「変わらない安心感」。リニューアルといっても、過度に変えてしまうとこれまでのブランドイメージが損なわれてしまう。水上氏は「リニューアルのポイントをフォーカスしすぎないようにした」と説明する。三ツ矢のロゴマークや、白と緑のパッケージでこの商品を探す人は多いだろう。そういったイメージはリニューアルを経ても残るようにする。ロングセラーブランドならではの考え方だ。
パッケージ変更の効果については、「環境に優しいイメージ」や「透明な色によるさわやかなイメージ」が向上したか調べる消費者調査をKPIにしている。新型コロナの影響で調査が遅れ、詳細な結果はまだ分析できていないというが、「定性的な印象では、ポジティブに捉えられている」(水上氏)という。
リニューアルに関しては、当初の計画では、スーパーなどの店頭でイベントを展開するなど、大々的にキャンペーンを行う予定だった。しかし、新型コロナの影響で、現場を中心とした取り組みは全くできていない。新しくCMキャラクターに起用したアイドルグループ「嵐」のオリジナルグッズを使ったキャンペーンは好調だが、営業担当者が景品を持って出向くなど、メーカー発信で「売り場を面白くする」ことはできなくなった。
そこで注力しているのが、デジタルを中心とした発信だ。
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