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自分も切られる―― 加速する「人減らし」 コロナ禍を生き抜く、“人を守る”知恵河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

「そのうち自分も切られる」――正社員でもそんな不安を抱えている。企業の“人減らし”は、コロナ禍によってさらに加速している。そんな中、「働くこと」を守る取り組みも始まっている。雇用維持のために助け合える企業こそ、生き残っていけるのではないか。

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「最後は自分も切られる」――ますます増える人減らし

 「新型コロナ感染拡大防止で在宅勤務などが増え、成果が見えるようになりました。会社はできる限りできない社員にお引き取り願いたいと考えているので、これは好都合なわけです。

 こんな先行きが不透明な時期に……という思いはあります。でも、これからますます人手は余るようになるでしょうから、仕方がないと思う自分もいる。これまでも肩たたきはやっていました。一緒にやってきた仲間や部下を追い詰めるのは、決して気持ちのいいものではないですし、周りが想像する以上に精神的に疲弊します。その半面、自分の優位性を感じるというか、切られる側に問題があると思うようになっていくんです。

 ただ今回始まったリストラは長期に及ぶでしょうし、会社の構造そのものが変わっていくと感じています。冷静に考えれば私も50代半ばですから、切るだけ切らされて、最後は自分も切られると思っています。

 だったらいっそのこと、今のうちに会社をやめて次のことを始めた方がいいんじゃないかと考えたり。でも、逆に今を乗り切れば、自分は安泰でいられると考える自分もいて、もう何がなんだか分からなくなる。考えれば考えるほど答えが出なくなってしまうので、だんだんと考えるのをやめるようになっているようで、そんな自分が情けなくてたまらないんです」

 おそらく、この話を聞いた人たちは「会社に依存しすぎ」だの「50過ぎて自立できてない」だの「どこまで昭和ひきずってるんだ」と批判することでしょう。

 しかし、先行きが混沌とする状況下では誰だって足が止まります。不安が募れば募るほど、それから逃れるように根拠なき楽観にすがりたくなるのが、人間の性です。実に厄介ですが、人の感情は決して一つではなく、複雑に絡み合っています。雑多ある感情の中で、具体的な解決策が見えないもどかしさから逃れるために、「なんとかなるんじゃないか」という楽観に都合よくすがるのが人間であり、人の弱さなのです。

 とはいえ、男性が指摘する通り、今後はますます人減らしが広がっていくでしょう。そもそもコロナ前に「人手不足」だったのは、低賃金で雇える人材のこと。非正規を増やし、外国人労働者を増やしてきたことからも明らかです。

 つまるところ、件の男性が指摘する通り、そのうち「自分」にも白羽の矢がたつのは時間の問題です。個人的には、今こそ人に投資し働く人が幸せな会社を作ることこそが、企業が生き残る最善策だと考えていますが、悲しいかな「会社員消滅時代」の到来を予感させます。

 「法人の顔と頭だけは残すけど、手足はとっかえひっかえ使える人だけを使う」企業が、増えていくに違いありません。今まで以上に、「人」をみないで「カネ」だけをみるようになっていくのです。

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