日本でも堂々リクルート 中国の“人材狩り”に切り込んだ、豪レポートの中身:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
オーストラリア発で、中国の“優秀人材狩り”に関するレポートが公開された。世界中に拠点を構え、あの手この手で先進分野の人材を協力者にしている。日本でもリクルートイベントなどを開催している。知財などの搾取を止めるため、法規制や危機管理を徹底すべきだ。
日本でも堂々とリクルートイベント
では、日本ではどんな活動が行われているのか。
レポートには「日本における有能人材リクルート」というコラムがある。そこを、そのまま翻訳して引用したい。
中国留日同学会は、日本における華人科学者やエンジニアたちのための統一戦線グループ(プロパガンダなどを行う組織)を率いている。中国留日同学会は1998年に、中国共産党中央統一戦線工作部(UFWD)と、UFWDが海外で人脈を持つ学生と接触するのに協力するUFWDの帰国学生連盟(WRSA)の指導によって設立されたと同会は説明している。
中国留日同学会のこれまでの会長は全て、中国帰国学生連盟(WRSA)またはUFWD傘下の別組織である中国海外友好協会の諮問委員会メンバーを務めている。この会は少なくとも8カ所の優秀人材リクルート拠点を運営し、日本でリクルート(取り込み)のためのイベントを行い、中国国内で行われるリクルートイベントにも連れていく。これまで、福建省だけで30人のリクルートに成功しているとされる。この中国留日同学会は中国が先端テクノロジーを取り込もうする計画に関与しているのにもかかわらず、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は一緒になってイベントを開催するなど協力し合っている。
鳩山由紀夫・元首相は、中国帰国学生連盟(WRSA)が運営する最初の海外活動拠点の開設イベントに出席している。
このレポートは、日本からの人材や情報を取り込もうとする中国の関連組織とJSTが仲良くしていることに対して「大丈夫か?」という批判的ニュアンスで書いている。明らかにテクノロジーなど日本の先端技術を扱っているのに自覚がなさすぎである。性善説で対応していては搾取されておしまいである。しかも、レポートは元首相がイベントに登場している写真まで掲載しており、まるで鳩山氏がこうした中国の活動に協力しているかのようである。
こうした拠点から、大学や研究施設だけでなく、民間などにも浸透していく。そして優秀人材を取り込み、彼らの研究を奪ったりする。レポートではこんな例が紹介されている。
2019年に、ある上海近郊出身の中国人が米名門大学などを卒業後、米国で浙江省温州の関係者が関わる組織を設立し、温州の中国共産党中央統一戦線工作部(UFWD)と契約。その組織は100人以上の米政府関係者や、米IT企業のGoogleやAppleなどの従業員らも会員にしていた。また米研究所から中国に留学する人物を手配するなどの活動も確認されている。裏では、中国のために経済スパイ行為や情報収集が行われていた可能性が指摘されている。
しかもこの中国人は、米電気自動車メーカーのTesla(テスラ)に就職。自身も、同社の自動運転プログラムのソースコード(設計図のようなもの)を盗んで中国の自動車メーカーに渡したとされる事件が判明。テスラはこの従業員を告訴しており、今も裁判は続いている。
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