デジタルで「4P」はどう変わる プロモーションは「会話」が勝負? シャープやタニタのSNSが人気なワケ:「新時代」のマーケティング教室(1/4 ページ)
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。
デジタル時代のマーケティング・ミックス
製品政策、価格政策、流通政策、それからプロモーション政策の4つを、対象となる顧客に合わせて組み合わせるフレームワークをマーケティング・ミックス(4P)と呼ぶ。マーケティング・ミックスは、各要素の組み合わせの論理であるとともに、それぞれの要素が個別の研究領域と結び付きながら独自に発展を遂げてきた。
デジタル時代におけるマーケティングを考えるときも、マーケティング・ミックスは役に立つ。前回も紹介したように、デジタル時代におけるマーケティングは、「顧客の参加」を大きな特徴とする。マーケティング4.0では、製品政策は共創政策へ、価格政策は通貨政策へ、流通政策は共同活性化政策へ、そしてプロモーション政策はコミュニケーション政策へと形を変える。今回は、最後に残ったコミュニケーション政策について考えてみよう。
デジタルで企業と顧客の「会話」が増えた
マーケティングは、よく広告やプロモーションと同じ意味で扱われる。デジタル・マーケティングという場合も、デジタルを用いた広告やプロモーションのことだと考えられることも多い。マーケティング・ミックスという点からみれば、広告やプロモーションはあくまでマーケティングの一部であることが分かるが、逆に言えば、それだけ広告やプロモーションの重要性が高く思われているということでもある。そして広告やプロモーションは、企業から顧客に一方向に向かう時代から、すでに双方向の時代へと移り変わり、コミュニケーションの重要性が意識されてきた。
デジタルの発展は、企業と顧客のコミュニケーションをより促進させている。特に消費財の場合には、これまでは膨大な顧客の声を聞くことが容易ではなく、流通やブランドを媒介させたり、あるいはCRMにみるように顧客「情報」として管理したりするしかなかった。しかし、今ではソーシャルメディアやSNSを中心にして顧客の声を聞くことや見ることができる。そして、企業側がその気になりさえすれば、顧客と実際にコミュニケーションすることもできる。このとき重要になるのは、企業と顧客が会話できるということ、つまりコミュニケーションの中でも「カンバセーション」が可能になっているということである。
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