デジタルで「4P」はどう変わる プロモーションは「会話」が勝負? シャープやタニタのSNSが人気なワケ:「新時代」のマーケティング教室(2/4 ページ)
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。
シャープやタニタのアカウントが人気なワケ
もっとも分かりやすい例は、InstagramやTwitterで運営されている企業アカウントの数々である。
これらのアカウントは、もちろん従来的なプロモーションツールとして、一方向的に情報を発信するためだけに用いることもできるが、顧客の「いいね」や「ライク」に反応したり、コメントを返したり、人々とテキストベースではあるが会話することもできる。「企業と顧客」という形式的な関係を越えて、1人のお客と中の人、という人間同士の会話さえ実現できる点がポイントだ。
例えば、Twitterで多くのフォロワーを集めるシャープやタニタのアカウントは、長らく顧客との会話を続けている。その会話には、企業やブランドに直接の関係がない内容も含まれているし、中の人の個人的な話も含まれる。それはまさにマーケティングやプロモーションという枠を離れた人々の日常の会話そのものであり、だからこそ親近感が感じられ、時に語られるブランドの内容にも信ぴょう性が生まれるという好循環を起こす。
こうした企業アカウントによる会話はマネジメントしにくく、炎上リスクと隣り合わせにあるように感じられるため、全ての企業がすぐにまねできるものではない。ということは、すなわち競争優位の源泉に他ならない。優れた企業アカウントや企業アカウントによる会話は、単に情報拡散のツールとなるだけではなく、顧客のブランドへの信頼性や愛着を高め、購買行動につながる。
もちろん、ただコミュニケーションを繰り広げているだけではなく、炎上リスクを下げる方法がさまざまに講じられていることは言うまでもないだろう。
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