「ドコモ除外、シャープ追加」の日経平均、指数への影響は?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
日経平均からドコモが除外され代わりにシャープが追加となる。ドコモといえば、時価総額12兆円の超巨大企業であるが、シャープの時価総額は7500億円程度と、そのサイズは10分の1以下だ。ドコモを代替する銘柄として、シャープを組み込むことに悪影響はないのだろうか。
株価指数は、昔と今で全くの別物?
株式指数の特徴である「銘柄の入れ替え」だが、日経やダウが高値を更新しやすい性質を有する大きな要因のひとつがまさにこれにある。
特に銘柄が激しく入れ替わることで有名な株価指数が、ダウ30種平均株価指数だ。
現在から約30年前、1991年におけるダウ30種平均株価の構成銘柄には、米国のたばこ企業「フィリップモリス」や自動車企業の「ゼネラル・モーターズ」、そして原発銘柄の「ウエスチングエレクトリック」といった大型銘柄が数多く採用されていた。
この30ある銘柄のうち、今日までダウ指数に残っている銘柄はたったの7銘柄である。
IT革命による情報化社会に伴う産業構造の変遷によって、かつては米国を代表する30の銘柄に組み入れられていた製鉄や自動車業界は、IT業界にとって代わられることとなった。そして、ダウ平均と同様に日経平均株価の構成銘柄も、継続的に入れ替えが発生している。2000年4月には、225銘柄のうち、1割を超える30銘柄が一度に入れ替えられるなどして、当初採用された銘柄のうち、およそ7割程度が既に除外されているといわれている。
ここからいえることは、昔の株価指数と今の株価指数を比較することはできないということだ。バブル時のピークである3万8915円という株価水準は、構成銘柄の多くが入れ替わった今の日経平均では、全く意味を持たない数字であるといっても過言ではない。
足元ではバブル崩壊後の最高値を更新していると連日報道がなされているが、株価水準をバブル崩壊時から上回ったことから、直ちに足元の景気がバブル景気並みであるということはできない。中長期で景気のバロメーターを測るためには、株価指数よりもむしろ経済統計といった基礎的なファンダメンタルズ面を確認していくことが重要である。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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