「ドコモ除外、シャープ追加」の日経平均、指数への影響は?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
日経平均からドコモが除外され代わりにシャープが追加となる。ドコモといえば、時価総額12兆円の超巨大企業であるが、シャープの時価総額は7500億円程度と、そのサイズは10分の1以下だ。ドコモを代替する銘柄として、シャープを組み込むことに悪影響はないのだろうか。
日経平均への影響は◯◯円?
今回、シャープを組み込んだ日経平均株価指数は「株価平均型」指数であるため、時価総額の差は重要ではなく、株価水準の差分から指数全体に対する影響を推定していくべきだろう。
今回除外されるNTTドコモとシャープの株価を比較すると、その価格差は2466円だ。日経平均株価指数の構成銘柄は225銘柄であるが、単純に銘柄数の225で割ることで影響を測ることはできない。なぜなら、日経平均株価には、株式の併合や銘柄入れ替えの影響を緩和するために、分母の数字を225から調整する「除数」が用いられているからだ。この除数は、長い歴史の中で銘柄入れ替えや株式分割、第三者割当増資といったコーポレートアクションによって度重なる調整を受け、その数字は「27.731」と、当初の「225」の約10分の1となってしまった。
また、各銘柄は「みなし額面」による調整を受けるため、価格差をそのまま除数で割ることでも正しい影響は測れない。NTTドコモのみなし額面は500円であるため、日経平均株価の採用株価は、3876円 ✕(50 ÷ 500)= 387.6円となる。一方でシャープのみなし額面は50円だ。したがってシャープの採用株価は1410円 ✕(50 ÷ 50)= 1410円である。
そうすると、銘柄入れ替えによる影響は1410円から387円を引いた1023円を、除数である27.731で割ることで、36.9円程度のプラス寄与となる見込みだ。その影響は軽微にとどまることが分かるだろう。
ただし、時価総額の小さいシャープの方が会社の成長に伴う株価の上昇幅が大きいため、同社が堅調に成長を続ければ、中長期的にはNTTドコモよりもある種効率的に、日経平均株価の上昇に貢献するとも考えられる。
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