富士急行に、なぜ乗客が集まるのか:ガチンコの鉄道(3/5 ページ)
私鉄グループ各社のなかで、多角経営により東証一部へ上場しながら、鉄道事業にも本気で挑んでいるのが、富士急行だ。本社は人口4万6000人ほどの山梨県富士吉田市にあり、メイン路線は大月駅から富士山駅を経て河口湖駅までの延長26.6km。そんな地にありながらも営業係数は100を切り、黒字を維持している。今回は、富士急行が取り組む本気の鉄道事業を紹介したい。
乗る楽しさ、路線の楽しさを味わえる富士急行の電車
現在はコロナ禍により、富士急行線内だけの特急は運休し、JR東日本から乗り入れる「富士回遊」だけが運行されている。しかしコロナ禍前の富士急行は、他社の中古車両を使用しつつも、魅力的な特急車両で乗客を集め、多くの利用者を獲得してきた。
例を挙げると「フジサン特急」と「富士山ビュー特急」がある。
初代の「フジサン特急」は、JR東日本の165系ジョイフルトレイン「パノラマエクスプレスアルプス」の車両を改造して使用していた。車体には富士山をイメージした楽しそうなキャラクターが描かれている。
2代目の「フジサン特急」も、同様に富士山の楽しそうなキャラクターを描き、小田急20000型RSE(「あさぎり」に使用)を改造した8000系電車を使用している。車内には子ども向けの運転台を設置し、富士山麓へと勾配・曲線を登っていくなかで前面展望を楽しみながら運転士気分を味わえる。
また「富士山ビュー特急」はJR東海371系(こちらも「あさぎり」に使用)を改造した8500系を使用。改造にあたって水戸岡鋭治氏がデザインを引き受け、美しい車体と上質な車内空間に仕上げている。この列車には車内販売があり、土休日には「スイーツプラン」も設けられている。
以前、取材で「フジサン特急」に乗ろうとしたら、JR東日本の中央本線から富士急行線への乗り換え場所はきっぷを買う人が殺到しており、筆者も予約していたきっぷの受け取りが大変だったことがある。
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