アフター・コロナの中国はいま:KAMIYAMA Reports(3/3 ページ)
中国は、コロナ禍の影響から経済が大幅に落ち込んだものの、感染拡大の初期段階で行動制限等の措置を素早くとったことにより、現状、生産など経済活動は他国に先駆けて正常化しつつある。
バイデン政権との摩擦があっても成長期待は続く
米国と中国との摩擦について、バイデン政権になっても大枠は変わらないとみている。テック・ウォーについては、安全保障問題なので変わらないだろう。貿易摩擦については、アプローチが多国間協定に変わる可能性はあるが、トランプ政権の成果を打ち消すために関税率を引き下げることはないとみている。民主党もバイデン氏も国内産業保護に熱心で、もともと自由貿易を望んでいるとはいえない。中国からみれば、“トランプ政権とは異なる”とみることは楽観的だろう。
トランプ政権に比べ、バイデン政権は人権問題について敏感になるだろう。トランプ政権は、香港の民主化運動についてあまり発言しておらず、貿易交渉の中で大きく扱ったとはいえない。しかし、民主党は人権を重視する傾向が強いため、トランプ政権とは異なり人権問題で強硬な策を講じる可能性がある。また民主党は、共和党に比べて企業活動よりも人権を重視するため、米国企業が困るような政策(例えば香港ドルと米ドルの交換停止)を選ぶ恐れもある。
しかし、中国側からみれば、米中関係はおおむねこれまでと同じ環境が続くとみてよいだろう。国内の生産・消費は回復傾向にあり、今後テクノロジーを含む製造業の高度化の継続も期待できる。共産党が期待するような1人当たりの所得を先進国並みに改善させるためには、生産性を劇的に改善させるという大きなハードルがある。このハードルを越えるためには、高等教育の拡充や設備改善、技術革新などが必要だ。技術革新はある程度キャッチアップできたとしても、真のイノベーションの連鎖が共産党政権の中央制御で行えるかは大きな挑戦であり、注目を続けていきたい。
筆者:神山直樹(かみやまなおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。
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