「リモートワークでコミュニケーションが減った」 実際何が問題なのか? 調査データを基に解説:「総務」から会社を変える(2/4 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。リモートワークの浸透でコミュニケーションが減ったことはよく課題に挙がる。では、コミュニケーションが減ると、実際にどんなデメリットが生まれるのか? 調査を基に解説していく
モチベーションの低下、8割の企業で課題に
調査によると、社員同士が顔を合わせる機会が減ることで、モチベーションに影響があると回答した人は82.6%だった。
その理由は、コミュニケーションに関する回答結果を見ることでヒントを得られそうだ。リモートワークを実施している企業に対し、リモートワークによる気軽なコミュニケーションの取りやすさに変化があるか尋ねたところ、「取りにくくなった」と回答した割合は72.3%だった。つまり、日常的なコミュニケーションが取りにくくなったことで、モチベーションへも影響を及ぼしている可能性があるといえそうだ。
当然ながら、リアルな場であれば、横に居ればすぐにコミュニケーションが取れるが、リモートワークであると、電話をかける、Web会議を立ち上げるなど、ワンクッション入り、いちいちそのようなことをするのもおっくうになってくる。コミュニケーションの量は必然的に減少する。
チャットやメールという手もあるが、これらのコミュニケーションツールではすぐにレスポンスがあるかどうかは分からない。今すぐ聞きたい、相談したい、あるいは、何気ない雑談も、リモートワークだとやりにくいということだ。その結果、個人でいろいろと溜め込んでしまい、メンタル不調に陥るということにもなる。コミュニケーションが取りにくいということは、軽微な課題のようでいて、ボディブローのようにじわじわと効いてくる課題なのだ。
帰属意識の低下も顕著
リモートワークを実施している企業に対し、リモートワークの推進により、会社と社員とのつながりに課題を感じているか尋ねたところ「感じている」と答えた企業は84.2%に上った。つまり、コミュニケーションが減ることは、企業への帰属意識にもかかわる問題なのだ。
生産性が高く働くことができるのはリモートワークのメリットではあるが、各人のいる場所は家であったり、契約しているコワーキングスペースであったりとさまざまだ。そうした状況では、「会社らしさ」を感じることはなかなか難しい。会社らしさとは、メンバー同士が醸し出す雰囲気であり、リアルな場で感じとることしかできない。
「らしさ」を感じることができないと、会社への帰属意識は、当然低下する。センターオフィスは実家のようなもの、神社のようなものと表現されることもあるくらいで、その場にいることで初めて「らしさ」を感じ、帰属意識が醸成されるのだ。
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