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賃金はこの先も上がらず…… コロナ禍ではびこる「内部留保肯定説」と、企業の自殺河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

コロナ禍で企業の内部留保を肯定する声が出てきている。しかし、人件費を減らすことは長期的には企業を苦しめる。会社を動かし、生産性を高めるのは「人」だからだ。働く人の心身の健康が業績にもつながる。厳しいときこそ人に投資し、未来に備える必要がある。

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内部留保が世界の潮流になるかもしれない

 実際、これまで政府は「賃金を上げろ!」「設備投資しろ!」と企業に訴えてきましたが、20年10月30日の閣議後の記者会見で麻生太郎財務大臣は、「2019年度法人企業統計調査で企業の内部留保が8年連続過去最高となったことについてどう思うか?」と記者に問われてこう答えています。

 「内部留保がやたら厚くなけりゃ今回のコロナ対応はもっときつかったろうな。財務大臣の口車に乗って設備投資しなくてよかったと思っている経営者もいるんじゃないか」(毎日新聞2020年10月30日)

 まぁ、非正規を切りまくり、希望退職を募りまくっているのに、「???」という気がしなくもありませんが、専門家の中からは「内部留保が世界の潮流になるかも」という声が上がっているのです。


コロナ禍で内部留保を肯定する声も出てきている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 いずれにせよ、人はいったん手に入れた便利さは手放さないし、コストカットは底なし沼のようなもの。どんなに学者が、「人件費を削ることが長期的には企業の競争力を低下させ、経営者の決断の中で最もまずいものの元凶であることは歴史を振り返れば分かる」と説いても聞く耳をもちません。

 それは日本企業が低賃金の非正規を増やし、もっともっと安い労働力を求めて、外国人労働者を増やし、本来は国際貢献のための「技能実習制度」の実習生まで、安い労働力として雇い続けたことからも明らかです。「賃金はもとに戻らない」――。そう考えるしかないのです。

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