4月から「税込表示」が義務化 ”税別”のユニクロは実質値下げ? アパレルが逃れられない呪縛:ワークマンとの違い(2/3 ページ)
4月1日より税込み価格表示が義務化される。特に商品の安さを武器に戦う企業にとっては重要な意味合いを持つ。対応として次の2つのケースで分かれることになる。本体価格+税表記で訴求している企業と、すでに税込み表記で訴求している企業。代表的な例をあげるならば前者がユニクロで後者がワークマンといったところだろうか。
4月からの対応は 消費税内包で実質値下げ?
ユニクロの店内では「¥1290」「¥1990」「¥2990」「¥3990」といった大きく数字の入ったプライスPOPが目に飛び込むものの、全て消費税は別。ワークマンの店内も「¥1900」「¥2900」「¥3900」の数字が並ぶがこちらは全て消費税込み。
ワークマンは4月1日以降も何ら変更することなく営業できるが、ユニクロは税別表記を税込み表記としなければならない。今のプライスラインのまま消費税10%分を内包するか「¥1419」「¥2189」「¥3289」「¥4389」と税込み表記とするのか、対応はいずれかに限られる。
新作の春物商品の値札からは+税の表記が消えていることから、私は前者の方ではないかと推察する。
内包といっても実質10%分の値下げとなるわけで、コストとして吸収するのは厳しい。それでも断行するのはコロナ禍というマイナス環境の中で、ファッションが消費の優先順位のあと回しにされてしまい、節約カテゴリー入りしてしまうのは何としても避けたいとの思いからだろう。税込み価格表示とはいえ値上げと感じさせることは得策とは見なかったと考える。
そもそもこの消費税転嫁対策特別措置法とは、前回の消費税の増税(5%→8%)時に設けられた特例だ。消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保や、値札の貼り替えなど、事業者の事務負担に配慮する観点から、表示価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じていれば「税込価格」を表示しなくてもよいとしていた。
そしてこの特例を利用した企業と利用しなかった企業とに分かれた訳だが、8%への増税が2014年の4月だったことを思えば5年もの間、税別・税込み表記のPOPや値札がファッション市場には混在していたことになる。消費税も3%の頃ならいざ知らず、今や10%にまで上がってしまっている事からも、商品それぞれに税別なのか税込みなのかの意味も年々大きくなっているのだ。
ましてや商品の安さを追求していくファッション企業は、価格についてもこだわっていかなければならない。15年頃、原材料や人件費の高騰もあってアイスクリームやカレー、シチューといった食品類の値上げとともに、アパレルにも値上げ機運が高まったタイミングがあった。ユニクロはこの時に客離れを起こした苦い経験があるのだろう。一時的な客離れにしろ、代替え選択肢のある業態では、値上げは命取りになりかねない。価格戦略は店の業績にも大きく影響のでる要素なだけに慎重な判断が求められる。
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