4月から「税込表示」が義務化 ”税別”のユニクロは実質値下げ? アパレルが逃れられない呪縛:ワークマンとの違い(3/3 ページ)
4月1日より税込み価格表示が義務化される。特に商品の安さを武器に戦う企業にとっては重要な意味合いを持つ。対応として次の2つのケースで分かれることになる。本体価格+税表記で訴求している企業と、すでに税込み表記で訴求している企業。代表的な例をあげるならば前者がユニクロで後者がワークマンといったところだろうか。
ユニクロ店内でよく見る「新価格」の戦略
最近は生活者の潜在的な意識が購買決定を大きく左右する。特に衣料品は買い慣れた手順で購入する人が多い。以前買って気に入った店からのぞいたり、日用品の買い物ついでだったり、個人がそれぞれ納得のいく方法で商品を手にしている。常日ごろ「A店は安い」と思って買っていたのに、高く感じてしまうきっかけを与えてしまうと、A店で買う以外の選択肢を探すことになるのだ。
人気ショップとして継続して支持を集めるためには、いつもの買う習慣以外の選択肢をいかに与えず、顧客をつなぎとめておけるかが重要だ。
そのあたりのことを良く理解しているのがユニクロだ。現在、ユニクロの店内をのぞくと値下げ商品は1枚もない。冬物セール時期にもかかわらず値下げ表記が無いのだ。あるのは「新価格」と書かれた赤いPOP表記のみ。そう、ユニクロでは値下げ価格を「新価格」とうたうのだ。「値下げ」「処分価格」「割引」と聞いてワクワクしたのは遠い昔の話で、今では「余り物」とか「売れ残り」といった負のイメージの方が強くなる。
確かに「新価格」であれば、「新商品」や「新作」と同じように「新」で始めた方がブランドイメージが保たれる。しかし、それでは生活者の誤認とならないのか。個人的には少し不安に感じるのだが、そこまでこだわって価格訴求を考えているという事の裏返しでもある。
4月から始まる「総額表示」の義務化。今までお値打ち感を打ち出していた企業の大半は本体価格+消費税で価格訴求をしてきた。競合店の動きを見ながら消費税を内包させる(実質値下げ)企業が多いと考える。しかし、これは新たに消費税を転嫁する話ではなく、表現方法が変わるというだけの話なのだが、「値上げ感」=負のイメージという呪縛から、ファッション産業は逃れられないでいる。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン「マネー現代」などで特集記事などを執筆。
関連記事
- 「炎上」と「改革」で4000億円企業に コロナバブル後に真価が問われるZOZO
サービス開始からわずか17年で商品取扱高が約22倍以上に伸びたZOZOTOWN。急成長できた背景とコロナ禍でも成長し続ける強みを著者の磯部孝氏はこう分析する。 - 赤ちゃんに人気アイドルと同じ名前を 20年下半期「NiziUネーム」が急増
2020年に注目を集めたガールズグループの1つである「NiziU(ニジュー)」。赤ちゃんの名付けにも影響を与えているようだ。ベビーカレンダーは20年下半期生まれの女の子4万5670人の名前を調査。NiziUのメンバーと同じ読みの名前「NiziUネーム」がデビュー時期に増加していたことが分かった。 - ジーユーが21年春夏アイテムを最大3割値下げ ワンピースなど主力商品
ジーユーは、21年春夏の商品で最大3割値下げすると発表。新型コロナウイルスの影響で景気や雇用の先行きが不透明な中、節約志向に対応する。 - 最後発なのに発売3週間で2000万本突破 「キリン 生茶 ほうじ煎茶」が好調なワケ
キリンビバレッジが9月に発売した「キリン 生茶 ほうじ煎茶」が売れている。発売から3週間で販売数量が2000万本を突破。同社が2017年からの3年間で発売した新商品の中で最速の記録だという。その理由は…… - 市場規模は9200億円 ジーユーが少子化なのにベビー服に参入するワケ
カジュアル衣料品店を運営するジーユーが、ベビー服への参入を発表した。2021年2月22日にキッズ商品を取り扱う全国の大型店舗や、オンラインストアなどで販売を始める。少子化が続く中、なぜジーユーはベビー服に参入するのだろうか。 - ファーストリテイリング 営業利益23%増 巣ごもり需要で部屋着やヒートテック毛布などが好調
ファーストリテイリングは1月14日、2020年9月〜11月期の連結決算(国際会計基準)を発表した。それによると、売上高にあたる売上収益は6197億円(前年同期比0.6%減)、営業利益は1130億円(23.3%増)と大幅な増益となった。巣ごもり需要などで国内や中華圏でのユニクロ事業やジーユー事業が好調だったことが影響した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.