「国道16号」を越えられるか 首都圏スーパーの“双璧”ヤオコーとオーケー、本丸を巡る戦いの行方:小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)
コロナ禍で人口流出が話題となる首都圏だが、「国道16号線」を軸に見てみると明暗が大きく分かれそうだ。スーパー業界も16号を境に勢力図が大きく変わる。そんな首都圏のスーパー業界勢力図を、今回は解説する。
首都圏の有力企業でいうなら、内側は、オーケー、ライフコーポレーション、サミット、外側がヤオコー、ベルクという顔ぶれになる。加えて、内側のマルエツ、外側のカスミをイオン・グループが統合したユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)までが、代表的なプレーヤーだろう。それぞれの売上推移をみると、内側はオーケー、外側であればヤオコーに勢いを感じ取れる。ちなみに、食品スーパー業界の売上トップとされているのは、ライフコーポレーション(20年2月期売上7147億円)なのだが、京阪神と首都圏の2地域展開なので、首都圏だけに限定すると、オーケー・ヤオコーにやや見劣りする。
ただ、前述の通り16号内外のマーケットは異質であるため、この2社がガチンコ対決しているという場面は、そんなにない。ヤオコーは外から内側に向けて入っていこうという意欲を過去から明らかにしてはいるが、まだ実現できているとは言いがたい。これに対し、オーケーは、自社の展開エリアは16号の内側と宣言して、淡々と内側への出店を続けている。内側のマーケットが潤沢かつ競争環境が緩やかということは間違いないのだが、では外側の実力者であるヤオコーでさえ恐る恐るの挑戦になっているのはなぜなのか。
16号内の参入障壁が高いワケ
単純な話ではあるが、16号内は、ヤオコーのビジネスモデルからみると、不動産などのコストが高すぎて収益確保が簡単ではないとみられる。内側で成長を続けているのはライフとサミットだが、両社は三菱商事、住友商事という巨大商社の子会社であり、そのネットワークの全面バックアップの下、店舗開発を行うことができている。他のスーパーは、そうもいかないため、可能な限り投資負担の軽い物件を探さねばならない。
こうした背景から、オーケーもかつては、他社閉店跡地などの居抜き物件を中心に低コストの場所に出店を行っていた。しかし近年では、高コストな新築物件へも積極的に出店して、商圏拡大を実現している。近時のオーケーは、明らかに店舗開発力がパワーアップしたと感じられる。なぜそんなことができるのだろうか。
関連記事
- ウォルマートの「西友切り」は遅すぎた? それなのに今、楽天が西友とタッグを組むワケ
ウォルマートが保有する西友株式の85%を手放す。売却する株式のうち20%は、新会社を通じて楽天が取得するという。長らく伸び悩む西友だが、あえて今、楽天がタッグを組む理由とは? - 「次なる島忠」は? 買収劇から透けて見えた、ニトリの壮大な野望
島忠争奪戦に勝利したニトリ。小売・流通アナリストの中井彰人氏によると、どうやらホームセンター業界だけでなく、まだまだ狙いがありそうだ。 - 島忠巡り『キングダム』状態のホームセンター業界 秦=カインズにDCM、ニトリはどう戦う?
DCMと島忠の連合に、ニトリが待ったをかけた。小売・流通アナリストの中井彰人氏は、昨今のホームセンター業界を「古代中国戦国時代」と説く。同時代は人気マンガの『キングダム』で描かれているが、さて、その心は。 - 「先送り」したいきなり!ステーキと「先手」を打った鳥貴族 コロナ禍で明暗分かれた「見通し」の差とは?
コロナ禍の傷がまだ癒えない外食産業だが、「勝ち組」と目されていた企業間でも明暗が分かれた。今回は、いきなり!ステーキと鳥貴族を例に、小売・流通アナリストの中井彰人氏が解説していく。 - 「脱・総菜」がカギ コロナ禍で好調の食品スーパー、乗り越えるべき50年来の“タブー”とは?
巣ごもり需要で軒並み好調の食品スーパーだが、今後は「脱・総菜」の取り組みがカギを握りそうだ。そのために必要なものとして、小売・流通アナリストの中井氏は50年来親しまれている食品スーパーのある売り方を挙げる。 - 半沢直樹を笑えない? 現実に起こり得る、メガバンク「倍返し」危機とは
7年ぶり放映でも好調の「半沢直樹」。「倍返し」に決めぜりふに銀行の横暴を描く姿が人気だが、どうもフィクションだけの話では済まない可能性が出てきた。現実のメガバンクに迫りくる「倍返し」危機とは? - 「5000円分還元」にとどまらないマイナポイント事業の効果と、真の狙いとは?
6月に終了したキャッシュレス還元に続く、マイナポイント事業。登録・利用で1人につき5000円分のポイント還元を受けられるが、それ以上に得られるものがあると筆者は解説する。キャッシュレス政策が持つ真の狙いに迫る。 - “密”になるほどの人気で売り上げ絶好調 「ホームセンター」はコロナを機に復権できるか?
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多くの業界に出された休業要請から辛うじて外れたホームセンター。緊急事態宣言下でも“密”となるほど多くの人が訪れ、多くの企業が売り上げを伸ばしている。今回のコロナ禍を機に存在感を発揮できるか。 - コロナ禍は、地権者だけが得をする「不労所得スパイラル」を食い止められるか
コロナで大打撃を受けている小売り・飲食業各社。その副次的影響として、今後は都市圏を中心とした家賃相場の値崩れもあり得る。筆者は、大家ではなく消費者本位のビジネスが加速するチャンスだと主張する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.