日本が「世界の下請け工場」になる日――2021年、「曲がり角」に立つ2つの産業とは?:24時間営業、垂直統合をどう変える(2/4 ページ)
2021年、曲がり角に立つコンビニと自動車産業。コロナ禍の影響もあるが、長らく続く伝統的なビジネスモデルの歪な構造が明らかになり、刷新する必要性が出てきている。両産業にはどんな課題があり、どう立ち向かうのか。
各チェーンが直面する「2020年代問題」
各チェーンは公取ににらまれたくはないものの、生命線ともいえる24時間営業についてはできればやめたくはない、というのが本音ではないでしょうか。その証拠として、各チェーンとも公取委が正式コメントを発表した後、反旗を翻していたオーナーを中心とした非24時間営業を認めながらも、全店には広げずあくまで「例外」扱いにとどめています。
一方で、各チェーンが「対公取委」とは別に大いに気になっていることとして、この先5年でコンビニ契約の約3割が契約更新時期を迎えるという「2020年代問題」があります。つまり、24時間営業店舗は減らしたくはないが、フランチャイズ店舗も減らしたくない――とのジレンマから、オーナーサイドにある程度歩み寄らざるを得ないという状況に追い込まれているともいえます。
そんな状況下で少しずつ動き出した各チェーンの対応策をみると、姿勢の違いが出始めていることが分かります。
大きく2つに分かれた24時間営業への対応
ファミリーマートは、非24時間営業の希望を取って、約1割の店舗で深夜営業の休止も認めました。また店舗独自で日配品の値引き販売を認めることも発表しました。ミニストップは、加盟店との利益配分の見直しを行い、本部と加盟店で利益を折半にすると発表。これはかなり大幅な譲歩だといえます。この両社を業界内の規模の大小ではなく、顧客誘引力やオーナー引き止め力につながるブランド力で分析すると、セブン‐イレブンやローソンには及ばない業界3〜4番手の印象は否めず、やはりフランチャイズ契約継続確保を優先した対応方針を打ち出し始めたといえるかもしれません。
片や業界リーダーのセブン‐イレブンは、店舗特性に合わせた品ぞろえやオーナーの経費負担の一部減免などを発表するも、24時間営業や値引き販売への新たな対応はないようです。ローソンに至っては、オーナーとの契約内容の見直しに関連してこれといった動きはほとんどなく、無印良品との全面提携など「ローソンにしかないものを増やす」という差別化で危機を乗り切る姿勢を見せています。この2社は現時点において、あくまで本来のビジネスモデルをブラッシュアップしつついかに維持するかにこだわっているようにも見え、対応は二極化の様相を呈しています。
公取委の調査では、ここ5年でコンビニオーナーの平均年収は190万円も減っており、加えて約2割は債務超過状態にあるといいます。この問題を解決しないことには、コンビニビジネスの将来はないといっていいでしょう。ブランド力の上位2社と下位2社、どちらの方針が老朽化した昭和のコンビニビジネスを次なるステージに押し上げることができるのか。21年はまさしく正念場を迎えるとみています。
関連記事
- 「2代目」が陥るワナ――大戸屋の、“愛言葉”を忘れた値下げ路線が失敗しそうなワケ
経営権を巡ってドタバタ劇を繰り広げる大戸屋。“愛言葉”を忘れた新体制による、祖業を見切った値下げ路線は成功するのか。大塚家具とともに、大戸屋でも起こっている創業家2代目が陥るワナとは? - セコい値下げで喜んでいる場合ではない、NTTのドコモ完全子会社化ウラ事情
NTTがドコモを完全子会社すると発表。5Gや6Gのイニシアチブ奪還に向けて歓迎する声も多いが…… - 本当に大丈夫? 菅首相の「地銀再編」発言が、再び“失われた10年”を呼びそうな理由
菅首相がしきりに口にする「地銀再編」。確かに苦境に置かれる地銀だが、再編はうまくいくのだろうか。筆者は過去の長銀破綻を例に出し、また「失われた10年」来てもおかしくないと指摘する。 - 半沢直樹を笑えない? 現実に起こり得る、メガバンク「倍返し」危機とは
7年ぶり放映でも好調の「半沢直樹」。「倍返し」に決めぜりふに銀行の横暴を描く姿が人気だが、どうもフィクションだけの話では済まない可能性が出てきた。現実のメガバンクに迫りくる「倍返し」危機とは? - 7年ぶりに新作の半沢直樹 1月放送の「エピソードゼロ」からメガバンクの生存戦略を読み解く
7年ぶりに続編が放映されるドラマ「半沢直樹」。当時から今までで、銀行界はどう変わった? メガバンクの生存戦略と作品を合わせて読み解く。 - 「カメラ事業売却」の衝撃 業務提携中のオリンパスとソニー、祖業を巡る両社の分岐点とは?
カメラ映像事業の売却を発表したオリンパス。好対照なのが、業務提携関係にあるソニーだ。コロナ対応を巡る両社の分岐点とは? - 長期化するコロナショック レナウンの次に危ない有名企業とは?
新型コロナの影響はとどまらず、航空業界、観光業界を中心に甚大な影響を与え続けている。日本企業では、レナウンの破綻が話題となったが、経営に詳しい筆者の大関暁夫氏は、次に危ない企業として、2つの有名企業を挙げる。共通するのは、両社とも“時限爆弾”を抱える点だ - 都銀再編時に「ごみ箱」構想を持っていた金融庁と地銀救済で手を組むSBIホールディングスは天使か、悪魔か?
SBIホールディングスが仕掛ける「地銀救済」。陰には金融庁の影響も見え隠れするが、「証券界の暴れん坊」と目されるSBIと金融庁、それぞれの思惑とは? 過去、銀行勤務時代に大蔵省との折衝を担当していた筆者によると、90年代の都銀再編時に官僚は「ごみ箱」構想を持っていたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.