すごろくから、ポケモンGOへ? コロナ禍でオンライン化が進む社内研修の今:「総務」から会社を変える(4/4 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。コロナ禍により従来式の研修がオンライン化しつつある今、総務の現場からはどのような声が挙がってきているのだろうか。調査のデータを基に解説していく
すごろくから、ポケモンGOへ
調査の最後では、リモートワークをしている企業に対して、移動時間などで浮いた時間を何に充ててほしいと思うかも聞いてみた。その結果、「スキルアップのために時間を使ってほしい」が66.3%で最も多く、次点は「ワーク・ライフ・バランスを充実させてほしい」が60.2%。
社会人におけるスキルアップと言えば、数年前に注目を浴びた、リカレント教育が記憶に新しい。当時は人工知能(AI)ブームもあり「シンギュラリティ」などのフレーズも流行っていた。つまり、既存の仕事がAIを始めとするテクノロジーの進化により、消滅してしまう――そのような危機感を基に、スキルアップの機運が高まったのである。
合わせて、今や「人生100年」ともいわれる時代である。100歳まで生きるとなると、80歳くらいまでは仕事を続ける必要があるかもしれない。そのときに大事なことは、「複数の専門性」である。保有しているスキルが何か一つだけでは、そのスキルを必要とする仕事がなくなると、食べていけなくなる。2つ以上のスキルを身につける、保険を掛けておく、ということがビジネススキルにも求められてくるだろう。こうした状況を、ある経済産業省の人が、「すごろくから、Pokemon GO(ポケモンGO)へ」と表現していた。
すごろくは、サイコロを振りさえすればいつかゴールに到達する。しかし、現代の社会人人生を考えたとき、会社の倒産やリストラなどでゴールが突然なくなることもあり、また、ゴールに向かう道が途中で途切れていることもある。そこで、ポケモンGOのように、あるスキルに出会ったらゲットして、また違うスキルに出会ったらゲットしていく……そして、自ら絶え間なくスキルを進化させる努力が必要となるのだ。
そのような時代において、企業の社内研修はどうあるべきなのかを、総務としては考えたい。例えば、頻繁に研修を実施しても、自社でしか通用しないような内容のコンテンツでは、従業員を路頭に迷わせてしまう危険性がある。他社でも通用する、市場価値が高まる、最新の技術を学べる、そのような汎用性のある教育コンテンツがこれからは求められるだろう。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)、『経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター)
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