世界初! 人工合成タンパク質素材を開発した「Spiber」の今:15年間の研究を経て量産へ(2/6 ページ)
山形県に拠点を置く、次世代バイオ素材を開発している「Spiber(スパイバー)」をご存じだろうか。同社が開発したブリュード・プロテインは、石油に頼らない循環型の新素材であることから、“素材革命”として世界中から注目を浴びているのだ。同社の取締役兼代表執行役に、今後の展望などを聞いた。
植物を主原料としたテーラーメイドのタンパク質
スパイバーが開発・製造するブリュード・プロテインは、20種類のアミノ酸を独自に組み合わせた、テーラーメイドのタンパク質素材だ。その開発工程は非常に緻密(ちみつ)、かつ画期的。ほぼ無限にあるアミノ酸配列のなかから、製品が求める性能に応じてタンパク質の分子をデザイン。その設計図となる遺伝子を合成し、微生物に導入する。それを培養することで作り出している。
微生物の栄養源、つまりブリュード・プロテインの主原料となるのはコーンやサトウキビといった植物由来の糖。生分解性があることから、石油由来の素材に比べ、土壌や海洋環境に与える影響を軽減できると見込まれている。
タンパク質は生態系で利用される原料のなかで、もっとも身近であり、分子設計を変更することで、同一のプロセスや工場で多様な性質をもった素材を作り出すことができる。加えて、主原料を枯渇資源の石油に頼らずに生産ができるため、石油由来の化学繊維でも、動物由来の素材でもない革新的な素材として世界中から期待されている。
同社は、約15年間の研究開発により「夢の素材」と呼ばれる人工合成タンパク質の開発に成功した世界有数の企業だ。
「サステナビリティといっても、CO2を減らせばいいという単純な話ではなく、さまざまな側面で考えるべきです。この先、人類が生き抜いていくには、あらゆる選択肢を見つけることが重要です。そういった意味で、当社が開発するタンパク質は他の高分子材料と比べてもシンプル、かつ精密に設計することができるため、さまざまな用途に応用できる可能性に満ちあふれた素材なんです」(関山氏)
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