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世界初! 人工合成タンパク質素材を開発した「Spiber」の今15年間の研究を経て量産へ(3/6 ページ)

山形県に拠点を置く、次世代バイオ素材を開発している「Spiber(スパイバー)」をご存じだろうか。同社が開発したブリュード・プロテインは、石油に頼らない循環型の新素材であることから、“素材革命”として世界中から注目を浴びているのだ。同社の取締役兼代表執行役に、今後の展望などを聞いた。

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紛争のない平和な社会構築を目指し、研究者の道へ


2007年、スパイバー設立当初の関山氏(写真左から3人目)と先端科学研究所の冨田教授(写真左から2人目、写真提供:スパイバー)

 関山氏がバイオ素材開発の道に進もうと決めたのは、高校3年生のとき。慶應義塾大学・先端科学研究所の冨田勝(とみた・まさる)教授が語っていた「バイオテクノロジー」の可能性に心を打たれたという。

 「気候変動、食料、エネルギーなど地球規模の課題を解決するためには、バイオテクノロジーこそがカギとなるという冨田教授のお話をうかがい、『これだ!』と確信しました。どうしてもこの研究室に入りたくて、猛勉強の末に慶應義塾大学環境情報学部に入学、研究に携われることになりました」(関山氏)

 当時、バイオとITをかけ合わせた技術研究は世界的にもめずらしく、冨田教授はこの分野の第一人者と言われている。

 そもそも、関山氏が「地球規模の課題解決をしたい」との野望を抱いたのは、高校の授業で知った1994年のルワンダ虐殺が動機だった。わずか100日の間に100万人以上が虐殺されるという悲惨極まりない紛争だ。

 「これが自分が生きている現代の出来事だなんて、あまりに衝撃的で、なぜこんな紛争が起きてしまったのか考えずにはいられませんでした。原因や対策を突き詰めていくと、発端は資源の奪い合いだった。人口が増え続ける地球上で、近い将来、貧困地域の人々が先進国の人々と同じ暮らしをすると想定したら、到底資源は足りない。その事実に非常に危機感を覚えました」(関山氏)

 将来、自分や自分の大事な人たちが紛争に巻き込まれるのは避けたい。紛争のない平和な社会構築のために貢献できることなら何でもよかったと関山氏は言う。そして、博士課程に進学して間もなく、24歳のときに研究所のメンバーであった菅原潤一(すがはら・じゅんいち)氏(現:取締役兼執行役)を含む3人で、スパイバーを立ち上げた。

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