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人事の課題をHRテックで解決 Thinkingsが掲げる「採用の解像度を上げる」ビジョンとは業務の複雑化とツールの乱立が課題(2/2 ページ)

採用の応募チャネルの増加、通年採用の普及など、企業の採用活動は多様化・複雑化し、担当者の業務は煩雑になった。採用のミスマッチをなくしていくことが経営課題にもなっている。HRテック企業の社長と投資家の目線から現状の採用についての問題点を語る。

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求人票を作る難易度が上がった

 同社は、シリーズAの投資ラウンドで9.5億円を調達した。ラウンドのまとめ役などを果たすリードインベスターとして投資したインキュベイトファンドの本間氏は、世界的に起きている企業の採用活動の変化を次のように解説する。

 「新型コロナウイルスの影響で、米シリコンバレーは大きく変化しています。シリコンバレーには大手企業や投資家が集積していたものの、最近はオースティンなど別の地域に人材が移っています。リモートワークだけでなく、リモートでの面接や副業・兼業まで、働き方が大きく変わりました。

 同時に、求められる人材が多様化しています。ベンチャーでもディープテック(編集部注:科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み)、ヘルスケア、バイオ、宇宙など、求められる人材が多岐にわたるものの、その人材がどこにいるのかが分からないのが現状です。

 さらに、デジタル化の流れの中で、企業が参入している業態の垣根も分かりにくくなっています。象徴的なのは米テスラですね。車のメーカーだと思っていたら、エアコンの市場にも参入し、バッテリーも作ります。日本でも横断的な業態の企業が増えています。採用市場に対してキャリアの変化を説明していく力が、企業には必要になってくるのではないでしょうか」

 本間氏は、人材の獲得競争が激化する中で、企業は自社の組織でしか出せない付加価値を示せるかどうかで採用に差が出てくるのではないかと指摘。吉田氏は「どういう人材が欲しいのかを考えて求人票を作る行為の難易度が上がっている」として、二人とも「人材の採用から定着までをどのように科学していくのかが今後さらに求められる」という認識で一致した。

HRテックツールは多すぎる

 本間氏はさらに、Thinkingsに解決を期待したい点と前置きした上で、日本のHRテックの課題を挙げた。それは、HRテックのツールが多すぎることだ。

 「HRテックはツールがありすぎて、どのツールが本当にいいのか評価が難しいと感じています。今回投資するにあたって、いくつかの企業にヒアリングしても、どのツールが使いやすいのかについては意見がバラバラでした。人事担当者も違いをよく分かっていないことがあります。

 すでに会計ソフトなどは、厳しい競争の中で評価にさらされてきました。おそらく、人事の領域も今後そうなっていくと思います。いいものが残っていくためには、データやエビデンスを出していく必要があるのではないでしょうか」

 この課題に吉田氏は、「SONAR ATS」では利用している企業のデータから見える採用課題の傾向をもとに機能開発を進め、足りない部分を他社のツールと連携することで「効果のある採用を実現したい」と意欲を語った。

 「採用がうまくいくのは、企業側の理念と、応募者側の思いが重なったときだと思います。しかし、企業側としては求人を作って流通させてから、応募の受付、面接、採用と、入社までにいろいろなことがあり、見るべき情報が多すぎて、採用のハードルが高くなっています。

 本間さんが指摘した通り、採用のツールが乱立していて、現状では決定版と言えるものはないと思います。求人情報を流通させて適切にターゲットに届かせることと、応募から人材を見極めることは、HRテックがテクノロジーで解決すべき課題だと考えています。

 SONAR ATSには採用ツールや、マッチングの実態についてのデータが蓄積されています。今後はオンライン面接の分析や、入社して5年後、10年後にどう活躍しているのかといったデータも活用されていくのではないでしょうか。こうしたデータを管理しながら、いかなる機能を開発していくのか、他社とどのように連携していくのかを考えて、効果的な採用を実現したいですね」

HRテックのプラットフォームを目指す

 「SONAR ATS」への投資を決めた大きな理由を、本間氏は2点挙げた。1点は採用について細かい対応ができるように作り込んだ、クラウドで提供されるソフトウェア(SaaS)であること。もう1点は、HRテックのプラットフォームになる可能性があることだ。

 「新型コロナによる変化もあって、画一的な採用は終わりつつあると思います。組織が強くなるためには、応募者にきめ細かく対応することと、自社に最適な採用管理のフローを設計すること。これは必須だと思いますので、自由に設計できるチャート形式で管理やコントロールできる仕組みはいいですね。そこまで作り込んでいるSaaSは他にはないと思います。

 SaaSビジネスでは、『さまざまなサービスを統合してプラットフォームにします』とプレゼンする企業がたくさんありますが、実際にプラットフォームを目指してきちんと進めている企業はほとんどありません。その点でThinkingsはベースがあり、データも蓄積しています。投資家としてはHRテックのプラットフォームになるよう期待したいと思っています」

 吉田氏もプラットフォーマーになるために、自身が設立したイグナイトアイ(東京都千代田区)と、同じくHR Tech事業を手掛けるインフォデックス(東京都中央区)を経営統合させてThinkingsを設立したと説明。上場を目指す意気込みを次のように語った。

 「プラットフォームとして使ってもらえるようになるには、パブリックなカンパニーであることが重要だと思っています。上場を目指しているのはそのためでもあります。上場することで、クラウドシステムを提供する企業として、お客さまがより信頼してデータを蓄積して頂けるのではと考えています。

 もちろん、採用管理システムを使うだけでは、採用の仕事は完結しません。足りない部分を補ってプラットフォームを実現するために、新サービスのSONAR Marketplaceでは、応募、選考プロセス、入社後という3つの領域で他社の多様なサービスと連携します。

 特に、応募の領域についてはサービスが乱立している状態です。この職種ならこのツールがうまくいっているという提案を、なるべく早くできるように取り組んでいきたいです」

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