結局バレる! 企業のトラブル対応は「2次被害」こそが重要なワケ:働き方の「今」を知る(3/4 ページ)
後を絶たない企業の不祥事・炎上だが、対応一つで影響を大きく変えることも可能だ。具体的に、どのように対応するのがよいのか、あるいは悪いのか。過去の有名企業での事例とともに解説する。
ただ同社は、そこからの動きが早く、かつ徹底していた。虫混入疑惑とは無関係な場所も含め、全工場での生産を停止。同時に、既に市場に流通していた製品4万6000個を自主回収するとともに、全国で販売休止を決定した。事件発覚からわずか10日あまりのことであった。
その後、当時の年間売上高の1割超の投資を行い、生産設備を完全に入れ替え、徹底的に品質管理を強化した。操業停止の間、人員整理は一切行わず、従業員へのボーナスも全額支払い、新入社員も受け入れた。また、生産中止で行き場所がなくなった大量の在庫(食材、調味料、旧容器など)を全て取引先から買い取り、社長が小売店へおわび行脚を行ったほか、自ら工場に赴いて仕分けを率先し、社員を鼓舞するなどの対応をしたのだ。
結果的にこれらの姿勢が地元の取引先から強く支持され、販売再開時の支援体制につながることとなった。約半年後に販売再開した際には、当初予想の約3倍程度の注文が入り、24時間フル稼働の生産体制でも追い付かず、急きょ製造ラインを増やして対応しなければならない程であった。販売休止期間中、他社にシェアを奪われることもなく、出荷量も拡大を継続している。コロナ禍中の20年5月には、グループ社員約150人に対して「特別感謝金」として1人10万円ずつ支給する大判振る舞いをしたことも話題となった。
「迅速かつ積極的に」が対応の鉄則
前回記事でも触れたが、企業不祥事が発覚した場合の対応において重要なことは、「発覚時には既にネガティブな情報が回収不可能な状況まで拡散している」という前提のもと、迅速に対応することに尽きる。この場合の「迅速に」の定義は、「一刻も早く対応しないと、企業の存続危機にもなる非常事態である」というレベルで危機感を共有しておくべきだろう。
その上で、積極的な情報開示も望まれる。関係者が関心を抱く事項に対して先手を打って答え、彼らの要望に応えることで、「真摯な対応がなされた」と認識されればよいだろう。その段階で正確な情報提供が行われ、企業として実態をきちんと伝えようとする誠実な意思を示さねばならない。細かく指摘するならば、以下の各要素に対して情報提供ができることが望ましい。
- 「何が起こったのか?」→確認できた事実を伝える
- 「なぜそれが起こったのか?」→原因を究明した結果を伝える
- 「どこに責任があるのか?」→責任の所在を明らかにする
- 「損害・損失は?」→損害・損失を明らかにし、講じている拡大防止措置を伝える
- 「今後の見込みは?」→再発防止のための取り組みを伝える
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