なぜデジタル画像に何十億円もの値がつくのか? 熱狂するNFT市場(3/5 ページ)
ゲーム内の土地がトークン化され数億円で売買されたり、デジタルアートが75億円もの値段で取引されたりと、全世界的にNFTと呼ばれるトークンが盛り上がっています。国内でNFTのマーケットプレイスを開始したコインチェックの天羽健介執行役員による、NFTに関する寄稿。
NFT業界の課題と期待
NFTはインターネット上で価値の移転を可能とする新たな仕組みであり、これから私たちの生活を変えていく大きな可能性を秘めています。一方で、課題も決して少ないわけではありません。ここでは、NFTが現状抱えている3つの課題について説明していきます。
1つ目は、スケーラビリティ(拡張性)の課題です。2020年、暗号資産業界ではDeFi(分散型金融)が熱狂的な盛り上がりを見せました。その際、取引に必要なガス代が高騰しているという話題見た人も多いのではないでしょうか。
実はDeFiとNFTには、ブロックチェーン上で自動的に契約を実行する「スマートコントラクト」が実装されている暗号資産の代表格であるイーサリアムの技術・規格を使って発行されているという共通点があります。そのため、いずれも人気が出て多くのユーザーが利用すると、ガス代といわれるイーサリアムネットワーク上の処理にかかる手数料が高騰してしまうなど、スケーラビリティの課題が発生してしまいます。
この課題に関して、イーサリアム自体も改善に向けて動いていますが、さまざまな団体や企業もこの課題を解決すべく知恵を絞っています。例えば、バイパスのような役割をするサイドチェーンや、異なるチェーンをつなぐクロスチェーンという技術。NFTの処理に特化したチェーン、コインチェックのマーケットプレイスのようにオフチェーンで回避するというさまざまなアプローチが出てきています。
スケーラビリティの課題に対してどのような手段が有効であるかについては、今まさに世界中でトライアンドエラーが繰り返されている最中です。NFT元年といわれる21年、課題を解決する技術や仕組みの発展にも注目が集まりそうです。
とにかくNFTを発行して販売すれば、買い手がつく
2つ目は、ブームに乗じ、良からぬ方法でNFTが使われてしまう課題です。現在、世界中でNFTのブームが起きていることもあり、良いプロジェクトがたくさん出てきています。同時に裏側では、そうでないプロジェクトも同じくらい出てきています。まさに玉石混交ですが、とにかくNFTを発行して販売すれば、買い手がつく状況です。これはまさに、3年前のICOブームの時に、ホワイトペーパーを書けば誰でも簡単に資金調達ができていた状況と同じです。
もしNFTがICOと同じ道をたどるならば、どこかのタイミングで今の過熱したマーケットは一度落ち着き、規制やルールが整備されます。そして現在のIEOのように、第三者がしっかりと審査・監査したNFTのみが生き残っていくでしょう。ICOからIEOへ移行していく流れから読み解く限り、ブロックチェーンおよびNFTを利用するしないに関わらず、大前提としてコンテンツ自体が魅力的であること、その上でブロックチェーンやNFTを使う必然性や意味があるものが残っていくと思っています。
そして最後の1つは、難しさという課題です。現状NFTは、一般的に複数のサービスを介する煩雑な取引となるため、まだまだユーザー体験の改善の余地が多い状況です。
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