育休判明でローン融資拒否! 高飛車な銀行は、これから滅ぶと思えるワケ:働き方の「今」を知る(3/5 ページ)
男性が育休であることが判明し、ローンを断られた事例が話題に。いまだに金融機関の審査では、硬直的な審査が続いている。しかし、今後はこうした高飛車な銀行は、滅んでいくのではないだろうか。
2019年におけるわが国の就業者数6724万人のうち、非正規雇用比率は男性が22.8%、女性は56.0%にものぼる。また法人企業は約421万社存在するが、そのうち99.7%は中小企業だ。そして自営業主・家族従業者数も675万人。育休中の給与所得者と同様に、彼らも皆ローン審査はかなり難しいのが現状だ。
組織に勤めている限り、毎月給与が支払われるため、「安定した収入がある」「返済能力も高い」と見なされやすい。一方で非正規雇用者や個人事業主、中小企業経営者は、事業環境の変化が個人収入にダイレクトに影響する可能性が高く、けがや病気などがほぼ「休業」「収入激減」に直結するため、「ローン返済が滞ってしまうリスクが高い、不安定な存在」という枠組みに入ってしまうのだ。
実際、「売り上げは普通のサラリーマンの数倍あるのに、ローン審査に通らなかった」と嘆く個人事業主は多い。その理由は、審査基準が「所得金額」だからだ。サラリーマンや公務員のような給与所得者の場合、審査対象は「額面年収」だが、個人事業主の場合は売上から必要経費を差し引いた「所得金額」が対象だ。そして小規模企業経営者の場合は「自身の役員報酬の額面収入」に加えて「会社の利益」が対象となる。
そのため、住宅ローン審査に備えて、あえて経費を計上せず利益(所得金額)を過大にし、結果として多額の税金を納めるハメになってしまっている事業者もいるようだ。一方で小規模企業経営者が、社会保険料支払いを少なくするためにあえて低い報酬額を設定している場合、所得額が少ないと判断され、審査で不利になってしまう事態にもなり得る。また、多くの金融機関では「直近3年分の確定申告」を基に所得を審査する。そのため、3年以上事業を継続していて、かつ連続で黒字経営なら心配ないが、業績に波がある場合は、その中で最も低い所得額を基準に審査されてしまう。
これらはあくまで金融機関側の機械的な判断基準であり、目の前の相手が「育休中でもうすぐ復帰することが確定」していようが、「創業2年目の個人事業主で先行投資のためずっと赤字だが、受注が確定しており来期の年商は1億円を超える」状況であったとしても、担当者が個別事情を勘案したり考慮できたりする余地はほとんどないというのが現状なのだ。
関連記事
- 本当に大丈夫? 菅首相の「地銀再編」発言が、再び“失われた10年”を呼びそうな理由
菅首相がしきりに口にする「地銀再編」。確かに苦境に置かれる地銀だが、再編はうまくいくのだろうか。筆者は過去の長銀破綻を例に出し、また「失われた10年」来てもおかしくないと指摘する。 - 不祥事・炎上はなぜ絶えない? スタートアップ企業のトラブル事案から考える、危機管理広報の在り方
企業の不祥事や炎上は、後を絶たない。最近でも、スタートアップ企業で薬機法や景表法に関するトラブルが起こった。どうすれば、こうしたトラブルをなくせるのか。今の時代に、あるべき危機管理の姿を探る。 - 結局バレる! 企業のトラブル対応は「2次被害」こそが重要なワケ
後を絶たない企業の不祥事・炎上だが、対応一つで影響を大きく変えることも可能だ。具体的に、どのように対応するのがよいのか、あるいは悪いのか。過去の有名企業での事例とともに解説する。 - 「テレワーク7割」どころか、紙業務・サービス残業が横行の霞が関官僚 「与野党合意」で民間企業の模範となれるか?
政府が要請する「テレワーク7割」だが、そもそも霞が関で働く官僚が達成できていない。それどころか、民間企業未満の過酷な働き方が昨今明らかになっている。その元凶ともいえる国会対応を巡る与野党合意で、民間企業の模範へと変わっていけるのだろうか。 - 焼き肉業態で「非正規差別」? 批判記事を巡り、ワタミが抗議した「論拠」とは
コロナ禍で焼き肉業態へ業態転換を進めるワタミだが、近頃「非正規差別」をしているとの批判記事が公開された。これを受けてワタミ側は抗議文書を発表したが、その根拠は? 取材で見えてきた事実とは。 - 【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する
「ワタミの宅食」で起こった残業代未払い問題。それだけでなく資料改ざんやパワハラなど、「やっぱりワタミはまだブラックだったのか?」と思わせるような実情が告発された。本当にワタミはブラック企業へ回帰したのか。内部取材を敢行すると、思わぬ事情が見えてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.