VTuberがクラファンで1400万円の大型調達に成功! 仕掛け人が語る「熱い想い」:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
中京テレビの公式バーチャルYouTuberの大蔦エル氏がアンバサダーを務める「ナゴヤVTuber展」が、1438万円を超える大型調達を成立させる見込みである。正式な調達額が決定するのは9日後だが、本来の目標額が750万円であるため、クラウドファンディング自体はすでに成功している。
相次ぐ放送局のVTuber参入
近年では今回インタビューする大蔦エル氏やキミノミヤ氏を擁する中京テレビや、ニッポン放送、広島テレビといった放送局によるバーチャルYouTuberの参入が相次いでいる。
日本の伝統的な産業分野でもある放送局にとって、VTuber運営に必要とされるスキルや設備において重なる部分が実は多いことが背景にあるだろう。各社が自社の放送網を越えたネットでの存在感を高めようと切磋琢磨(せっさたくま)する中、エル氏は放送局がVTuberに参入することの可能性について、次のように将来像を描く。
大蔦エル氏 テレビ離れというワードがよく用いられるようになりましたが、まだまだテレビも多くの方にご視聴いただけています。放送局だからこそリアル・ネット・テレビなどの架け橋となって、インターネットを主に利用する人たちがテレビをつけるきっかけになるとうれしいです。
このようなエル氏の考え方は、マーケティングでいえばメディアミックス戦略に通ずる。メディアミックスとは、テレビ・ラジオ・出版・ネットなど、さまざまな媒体を組み合わせるマーケティング戦略を指す。各種媒体の弱点を補いつつ、それぞれの強みを発揮することで効果を引き上げる戦略だ。
そして、テレビ局がネットという媒体に打って出るにあたっては、その文化に馴染んだ活動の方法が求められるだろう。この点について、確かに大蔦エル氏は中京テレビアナウンス部所属の歴としたアナウンサーである。しかし、エル氏は「アナウンサー」というイメージというよりもどちらかといえば「友人」のような親しみやすさがウリだ。型破りな企画にも挑戦するVTuber文化に精通した活動内容も相まって、ネットという媒体にもうまく溶け込めている。
逆説的であるが、「アナウンサーらしくないアナウンサー」であることがエル氏の人気度の高さを裏付けているのかもしれない。
VTuberが選挙関連イベントも手がける時代に
そうはいっても、アナウンサーとして真面目なイベントもこなすギャップもある。エル氏は、今月9日に名古屋市長選の公開討論会イベントで司会に抜てきされたのだ。
大蔦エル氏 最初はVTuberが選挙関連のイベントに出ることについて懸念もありましたが、それとは裏腹に、これまで選挙関連のイベントを見ることがなかった若年層の方が多く視聴に来ていただき、主催の名古屋青年会議所の方も喜んでくださっていました。画面越しの参加でしたが、オンライン会議が普及したことも、視聴者の方にとって違和感なくご覧いただけた要因だと思います。
VTuberのファン層は、18歳から34歳までの若年層が最も厚く、これは選挙の投票率と反比例する。若年層の獲得が課題となっている分野に関して、新たな興味のフックとなり得るのが「VTuber」という存在なのかもしれない。
大蔦エル氏 私は生まれも育ちも名古屋なので、サブカルの町としても盛り上げていきたいと思います。 イベントを通してVTuber全体が盛り上がり、1人でも多くの方にVTuberの魅力を伝えていけたらと思います。ぜひ「ナゴヤVTuber展inパルコ」にお越しください!
今年で活動3年目を迎えるうら若きそのVTuberは、取材の最後までまばゆいばかりの熱と夢を煌(きら)めかせていた。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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