アイフルの好決算から考える、コロナで二極化する家計のリアル:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
消費者金融大手のアイフルが、著しい業績改善を見せている。5月に発表した2021年3月期決算によれば、グループの連結営業利益は前期比で約9.4倍となる175億円の黒字となった。
消費者金融大手のアイフルが、著しい業績改善を見せている。5月に発表した2021年3月期決算によれば、グループの連結営業利益は前期比で約9.4倍となる175億円の黒字となった。
21年3月期といえば、世界的なコロナウィルスの感染拡大と、それに伴う消費や経済活動の縮小によって家計へのダメージが懸念されている時期でもあった。そんな中で消費者金融セクターのアイフルが利益を拡大させているとすれば、やはりコロナ禍において生活が苦しい家庭も増えてきているのではないか。
そこで、まずはアイフルの決算情報をおさらいした上で、総務省統計局が公表している「家計調査」を見つつ、足元における「コロナ家計」の最新動向を追っていきたい。
アイフルの好決算と家計の関連性
消費者金融といえば、「生活が苦しい」といったやむにやまれぬ状況での利用シーンが第一に浮かぶかもしれないが、このように返す当てが見当たらない状況でローンを組むケースはイメージほど多くはない。むしろ、定期的な収入がある中で、カード支払いの補助として資金を融通したり、旅行や病気といった一時的な資金需要の増加に対処したりという側面も大きい。
コロナ禍においては、海外や国内遠方への旅行といった多額の資金が必要な消費行動が抑制された結果、一般的にはローン需要が低下することになり、これは消費者金融セクターのクレジット残高やローン残高減少をもたらし得る。
現にアイフルの決算情報を確認しても、コロナ禍をきっかけにローンを組み始めた家庭が急増したわけではない。同社の売上高自体は、前期比0.3%増の1274億円と微増だ。複数の借入を一つにまとめる「おまとめローン」を手がける保証事業は、前期比で15%ほどの成長を見せているものの、アイフルの中では1割程度の売り上げシェアに過ぎない。主力のローン・クレジット事業の残高自体はどちらも前年比でマイナス成長となっている状況であり、コロナ禍中の消費者金融はむしろ打撃を受けている形となっているのだ。
ただし、同社のローン貸付残高をセクター別で見ると、主に家計が利用する無担保ローンの減少幅は小さく、その需要は依然として高い。この度の残高減少の理由は事業者ローンであり、これが前年比マイナス17%まで落ち込んでいるのだ。これは、政府系金融機関によるコロナ関連の融資や、時短協力金などの支給といった事業主向けの支援が充実したことで、民間のアイフルはその“あおり”を受けたことによると推察される。
同社の貸出・クレジット残高といった営業アセット自体は0.5%減とマイナス成長となっているが、なぜアイフルは9.4倍もの増益に成功したのだろうか。その要因は、広告宣伝費の縮小と過払金の時効にある。
今回のテーマに沿って、広告宣伝費の縮小についてフォーカスしよう。そもそもアイフルのような消費者金融業界と広告宣伝費は切っても切れない関係にあり、広告宣伝費を縮小することはすなわち業界のシェア争いに敗れることを意味していた。
ローン商品は貸金業法などの法令や信用リスクの算定方法がある程度決まっているため、「A社の方が大幅に金利が安くなる」といった商品性からみた差別化が難しい。その結果、テレビCMなどの広告や「利息0円キャンペーン」などといった、マーケティング施策の点で差別化を図る必要があり、各社はこぞって多額の広告宣伝費を投じているという業界構造がある。
したがって、この広告宣伝費を約1割も抑制すれば、たちまちローンの残高のシェアも他社に奪われるはずだ。しかし、テレビCMやWeb広告経由で流入するターゲットの「家計」が利用する無担保ローンがほとんど減少していないことからすれば、「本来広告をかけなければ来なかったような人々」が、自発的に申し込みを始めている状態になっているとみられる。やはりコロナ禍の影響を受けて、キャッシングなどに手を伸ばす家計も少なからず増えていそうだ。
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