アイフルの好決算から考える、コロナで二極化する家計のリアル:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
消費者金融大手のアイフルが、著しい業績改善を見せている。5月に発表した2021年3月期決算によれば、グループの連結営業利益は前期比で約9.4倍となる175億円の黒字となった。
異なるコロナ家計像を写す総務省の統計
しかし、総務省が公表した家計調査を見てみると、ローン残高の底堅さとは裏腹に、貯蓄を大きく伸ばしている世帯も決して少なくないことが見えてくる。
5月に公表された20年の家計調査年報によれば、わが国における二人以上世帯の貯蓄額の中央値は1061万円と、コロナ前の19年と比較して27万円増加している。
実収入は名目・実質ともに4%ほど増加しており、全体としてはコロナ禍中でもコロナ前と変わらず給与がもらえていたり、昇給していたりしている人が多いのだ。さらに、消費の大きな落ち込みが見られたのは旅行や外食、ガソリン代などと、アフターコロナで一定の需要回復が見込める分野がメインであるため、「先行き不安などに伴う貯蓄の増加」というよりは、「単純にお金の使い先が見出せないことによって漫然と貯蓄に振り分けている」といった貯蓄動機が主となっているのではないか。
ただし、中央値や平均値といった統計ベースでは、コロナ禍において直接的な影響を被っている者の存在を見えなくしてしまうデメリットもある。統計データのみから直ちにコロナ禍の家計に対する影響が大きくないと断定することは早計だ。
今回は消費者金融のアイフル決算と家計調査を比較してみたが、やはりアイフルが広告費を削っても無担保ローン貸付残高がほぼ横ばいで推移している事実は、家計調査の平均値ないし中央値から見た家計像とは乖離(かいり)しているようにも見える。
そうすると、コロナ禍における家計のリアルとは、「これまで通りの給与をもらいつつ、旅行などを自粛した結果貯蓄が増えている多くの家計」と、「コロナのあおりを受けて生活からゆとりが失われている少数の家計」という二極化構造になりつつあると考えられる。
国の支援策などでアイフルにおける事業者ローンの貸付が減少したのであれば、筆者としては、家計についても同じ規模での公的な支援策が必要ではないかと考える。
国や公的機関の家計支援を確認
なお、厚生労働省が主導する生活福祉資金貸付制度などを利用すれば、個人であっても緊急の小口資金を借りることができる。新型コロナウィルスによる収入減や生活困窮状態にあるなど、諸所の条件こそあるが、利子は連帯保証人の有無によって年間0%〜1.5%と、消費者金融やキャッシングよりも有利な金利で借り入れを行える。
ただし、国の制度はテレビCMやWeb広告に多額を投じて広報しているものではなく、人知れず存在しているだけのこともままある。仮に生活が苦しくなった場合は、市区町村の社会福祉協議会に出向いたり、ネットで検索したりするなどして自発的な情報収集が必要になるだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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