資生堂が撤退したアメニティーに商機 化粧品メーカーの新たな一手とは:コロナ禍の苦境を救う?(5/5 ページ)
化粧品がさまざまな場所で“活躍”している。コンビニのPB商品や、ホテルのアメニティー開発など、化粧品の可能性を広げる取り組みが増えた。
一時品薄だったアメニティーに商機
バルクオムのアメニティー事業はメズム東京を皮切りに本格スタート。その1年ほど前、18年8月には資生堂がアメニティー事業撤退を発表し、同年12月には営業を終了した。スピード撤退の影響を受けたホテルは多く、アメニティーは一時品薄状態に。
木下マネージャーは「アメニティーが見直されるきっかけともなる出来事で、そこに商機を見いだしたところはある」と話す。現在は「星野リゾート界 箱根」など、シティー〜ラグジュアリークラスを中心に約150店のホテルに供給している。メズム東京以外への供給はポンプ式または使い切りタイプの「BULK HOMME」ブランドの製品だ。
これについて木下マネージャーは、主な理由を「もともと『BULK HOMME』はこれがベストだ、という商品を作っており、プロユースやセカンドラインなど複数ラインアップを開発していない。またアメニティー事業開始の経緯として、ブランドを体験してもらうという意図がある。そのためホテルだけでなく、体験してもらいやすい“非日常の場所”でタッチポイントを作っている」と話す。
これまでも同社はフィットネスや温浴施設などと協業しており、昨年は温浴施設とのコラボ企画「バルク男湯(オユ)」を実施。3月から開催中の「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木」では「THE TONER」(化粧水)と「THE LOTION」(乳液)を設置している。ブランドにとっては新たな消費者との出会いがあり、施設にとっては消費者満足の付加価値として受け入れられている。
新型コロナの影響で人の流れが鈍くなり、国内化粧品市場も以前ほどの勢いがなくなっている。価値提供としての化粧品の存在が大きくなっていけば、化粧品業界、異業種ともに、この状況を打破する一助となるはずだ。
著者プロフィール
臼井杏奈(うすい あんな/ライター、編集者)
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社の記者職を経て、ビューティー業界紙WWD BEAUTYで記者・編集職。2020年4月からフリーランス。中国や欧米などの海外市場やビューティーテック、スタートアップなどを中心に美容・ファッション関連の取材執筆を行う。
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