大赤字で“株価暴落中”の出前館、これは「良い赤字」か「悪い赤字」か:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(4/4 ページ)
コロナ禍による巣ごもり消費の追い風を受け、急速に対応エリアと店舗を拡大している出前館。しかし、25日に発表された出前館の決算は惨憺(さんたん)たる結果として市場に受け入れられた。コロナ禍を経て赤字が7倍以上も膨らんだことになる。
キャッシュフロー
「収穫時期まで手持ち資金が枯渇しないか」という条件をコメ農家的にいえば、赤字がかさみすぎて肥料やトラクターの燃料が買えなくなってしまうというイメージだ。いくら収穫が見込まれているとはいえ、収穫前に経営が破綻してしまえば、結果としてその費用は回収見込みがなくなってしまい「悪い赤字」となる。
出前館の決算では、「キャッシュフロー」から手持ち資金の状況を確認できる。出前館の営業キャッシュフローは、14億9800万円の赤字だ。営業キャッシュフローとは、広告宣伝費や人件費といった本業から生じる現金の増減を表している項目だ。
出前館の営業キャッシュフローにおけるマイナス要因を確認すると、アルバイト配達員などの人件費が前年比で2.2倍となっているほか、広告宣伝費が前年比で3.3倍となっている。そして、出前館の新規エリア展開やシステム開発といった投資キャッシュフローも4億4900万円の赤字となっている。ここまでで、同社資産のうちおよそ20億円のキャッシュが減少していることになる。
しかし、財務キャッシュフローは287億円と大幅な黒字を記録している。これは仮に営業・投資キャッシュフローが今後も同じ水準で推移したとしても、少なくとも10年は耐えられるほどのキャッシュが出前館に入っているということだ。
その理由は、20年3月に発表されたLINEグループとの資本業務提携にある。出前館は、LINEと、韓国ネイバーが共同で設立するファンドが150億円ずつ出資することで、実質的にはLINEグループの子会社となり、現在はLINEと経営統合したZホールディングス傘下となっている。手持ち資金としては潤沢であることから、この点から破綻の可能性は低そうだ。
そうすると、目先は株価が下がっているものの、それは経営の失敗というよりも成長に向けた投資という意図がうかがえもので、市場の反応と経営陣のビジョンに若干のかい離がある状況であるといえるのではないか。したがって、短期的には出前館の株価自体はネガティブなトレンドが継続する可能性こそあるが、水面下の利用度は今後も増加の傾向をたどっていくのではないだろうか。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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