大赤字で“株価暴落中”の出前館、これは「良い赤字」か「悪い赤字」か:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)
コロナ禍による巣ごもり消費の追い風を受け、急速に対応エリアと店舗を拡大している出前館。しかし、25日に発表された出前館の決算は惨憺(さんたん)たる結果として市場に受け入れられた。コロナ禍を経て赤字が7倍以上も膨らんだことになる。
出前館の赤字は「良い赤字」?
コメ農家の例から考える、良い赤字の条件の1つ目が「回収見込みがあるか」だが、これは損益の内容を確認すればつかめる。仮に、この赤字の大きな部分が新規獲得に向けた広告費などで占められていれば、一定数の顧客を獲得した上で一時的な費用の蛇口を閉じれば黒字化するのが、一般的な成長サービスの相場となる。
この点について、出前館の直近四半期における売上原価及び販管費は125億4800万円で、そのうち広告宣伝費は35億0700万円だった。一方で売上高は80億2900万円となっていることから、現状では広告費をゼロにしたとしても依然として赤字になる計算だ。
赤字の深掘りについてはUberやmenuといった競合サービスとの競争力を高めるためのエリア拡大施策や配達員の囲い込みにかかる投資分がかさんだことが原因として挙げられている。また割合は明らかではないが、販管費や人件費の部分でも一時的な費用が紛れ込んでいると見られる。
そうすると、今の状況では回収見込みの点で懸念は残るが、今囲い込んだ配達員と販路で、22年8月期の決算における売上高の増加と営業赤字の縮小が見込めれば、23年から24年8月期あたりには黒字化する可能性もある。
22年8月期の決算予想を、一部では今期見込みの2倍程度である600億円規模、売上高に対する営業赤字の率も今期見込みの50%台から10%台に縮小すると置いている機関もある。出前館の費用に占める広告費の割合は足元でおよそ28%程度で推移していることから、決算期が変わる8月以降の推移に注目したい。
ここまで考えると、まだ悪い赤字の不安が残るのではないかという懸念もあるが、良い赤字の2つ目の条件「収穫時期まで手持ち資金が枯渇しないか」を見れば破綻の懸念はとても小さいことが分かる。
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