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大赤字で“株価暴落中”の出前館、これは「良い赤字」か「悪い赤字」か古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)

コロナ禍による巣ごもり消費の追い風を受け、急速に対応エリアと店舗を拡大している出前館。しかし、25日に発表された出前館の決算は惨憺(さんたん)たる結果として市場に受け入れられた。コロナ禍を経て赤字が7倍以上も膨らんだことになる。

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赤字には「良い赤字」と「悪い赤字」の2種類がある

 そもそも、良い赤字と悪い赤字にはどのような違いがあるのだろうか。このテーマについて、コメ農家を例にとって考えてみよう。

 コメ農家は「良い赤字」を出す典型例である。なぜなら、コメ農家は一年の大半が「赤字」になるビジネスモデルだからだ。

 コメ農家が黒字になるのは、年に1回、秋の収穫タイミングのみである。そのほかの期間は、耕作や田植えといった生産にかかるコストのみが損益計算上に反映され、売り上げはゼロとなるだろう。しかし、コメ農家が職業として成立するのは、収穫のタイミングでこれまでの赤字を補って余りある収益を獲得できるからだ。

 つまり、コメ農家が収穫に向けて赤字を出し続けられるのは、その先の収穫の黒字イベントを想定できているからであり、そこから逆算したコストを算定しているからこそ手持ち資金を枯渇させずに経営を成り立たせることができる。この種の赤字はいわば「先行投資」ともいうもので、最終的には回収の見込みがあることから「良い赤字」といえる。

 一方で、相当の期間をもってもその赤字が回収できない場合は、先行投資と呼ぶことはできない。つまり「悪い赤字」となるのだ。

 では出前館の赤字決算はコメ農家と同じく先行投資、「良い赤字」といえるのだろうか。そもそも出前館は旧社名の「夢の街創造委員会」時代の05年8月期から18年8月期まで、約13年にわたって利益を生み出してきた企業である。平時でも継続的に成長している会社が、コロナ禍による特需の影響で「悪い赤字」を出すとは考えにくい。

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