フランス司法当局がユニクロなど捜査 新疆問題で表面化する日本アパレルが抱えるジレンマ:磯部孝のアパレル最前線(4/4 ページ)
7月2日、フランスの司法当局は「人道に対する罪の隠匿」の疑いでユニクロのフランス法人など4社の捜査を始めた。
以上の状況からみても、日本のアパレルの中国依存を下げていくには時間がかかるだろう。中国生産の中でより透明性の高いサプライチェーンを構築するか、直接投資を行い、原料調達を含めたコントロールを高めていくしかない。最低賃金の底上げという旗印が上るなかで、国内生産回帰は望みにくい。もちろん、開拓された東南アジアルートもコロナが落ち着けば、再稼働はできるはず。
生活者の意識改革も必要だ。地球環境についての意識は変わりつつあるものの、ファッションの価値観のポイントには、地球環境より「安さ」の方が最前列にきてしまう。裏を返せばそれだけ価値観のある「安さ」が提供されているのだろう。すると企業も「安さ」を探求していくしかない。つまり大量廃棄というリスクのある量産型ビジネスから抜け出すことができない問題を抱えてしまう。
米国では消費のアクティビズムが生まれている。生活者の価値観にあった企業の商品を積極的に購入する「バイコット」と、不買を示す「ボイコット」で、買い物自体に意思を示す買い物行動だ。これは企業ブランドが擬人化して評価される時代になったということ。私たちがシャツを1枚買おうと思った時に、「安さ」以外の新たな消費選択肢が加わるに違いない。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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