“雑草バブル”の熱狂 200万円超の落札事例も:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
今「雑草バブル」がピークを迎えている。ネットオークション最大手のヤフオクでは、これら観葉植物を中心とした高額取引事例が増加している。10万円を超える価格で落札されたものはここ半年で数百件にも上っており、数十万円での取引も珍しくなくなりつつある。
“雑草”はブームになるか
今回の「雑草バブル」の特徴は、テレビや新聞などのメディアによる報道がそれほど活発でない中で広がりを見せつつある点にある。バブルがコロナ禍における「手作りスイーツブーム」や、「鬼滅の刃ブーム」といった社会現象に成長する過程では、必ずといっていいほどそれらの有力な媒体が足元の口コミをすくい上げて拡散するという過程を踏む。
今の状況は、あくまで自発的な関心がある者が観葉植物へたどり着いている状況に過ぎず、受動的な消費性向の人々にまで雑草ブームは波及しきれていない。
しかし、近年では、小さなサボテンやコケなどをガラス容器で育てる「テラリウム」といった、「SNS映え」重視に植物をインテリア化する動きも見られるようになり、YouTubeでも「野性爆弾のくっきー!」氏が観葉植物を爆買いするという動画が40万回以上再生されるなど、ネット上で水面下の広がりが見られつつある状況だ。
この動きにマスコミやトレンドメディアなどが目をつければ、徐々に消費性向が受動的な属性にも波及し、“雑草ブーム”は完成するかもしれない。緊急事態宣言の再発出もあり、巣ごもり消費の傾向は未だ継続しそうだ。足元の検索ボリュームの高まりからも、ブームになる素地は十分にある。
なお、ここまで便宜上各種の植物を「雑草」という言葉で一まとめにした点、愛好家の皆様におわびしたい。そこで最後に、「雑草という草はない」という言葉を紹介して締めたい。これは生物学者としての一面もあられた昭和天皇のお言葉である。“雑草”という単語は、特有の名前がある植物にフィルターをかけた、人間のエゴで生まれたような言葉なのかもしれない。雑草に限らず、漠然と捉えている物事をもう一歩深く掘り下げていくことで、新たな発見や出会いを見つけることができるようになりたいものだ。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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